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平成23年司法試験 行政法 参考答案

2026年8月16日

参考答案

第1 説問1

1 原告適格は,取消訴訟を提起するにつき「法律上の利益を有する者」(行政事件訴訟法9条1項,以下法名省略),すなわち,自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者に認められる。そして,当該処分を定めた行政法規が不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益に吸収・解消させるにとどめず,個々人の個別的利益としても保護する趣旨の場合も,当該利益は法律上保護された利益にあたると解する。そして,処分の名宛人以外の場合には,9条2項に従って判断する。

2 X1について

(1)まず、法の目的規定(法1条)においては、船舶等の改良や輸出の振興等が挙げられているのみであり、原告適格の手がかりとなる文言はない。そこで、本件処分の根拠規定である法5条2項の委任を受けた施行規則をみると,同規則12条1号において「文教上…著しい支障をきたすおそれのない場所であること」が許可基準になっている。また、同規則11条2項1号では、場外発売場から1000メートルの区域内にある文教施設の位置及び名称が明記された見取図を,許可申請書に添付することが求められている。以上から、法は、少なくとも場外発売場から1000メートル以内にある施設の設置者の文教上の利益を保護する趣旨といえる。

(2)また,文教上の利益,より具体的には静謐な環境で教育を行う利益が害されると,学生の勉学に支障が生じ,ひいては入学者数の減少等につながることから,かかる利益は大学の施設の設置者にとっては不可欠な利益といえる。

なお、139号通達は、行政規則としての性質を有し、国民の権利義務に関する法規範ではないが、法の趣旨を解釈するに当たって参考とすることは許される。そこで同通達をみると,文教上著しい支障を来すおそれがあるか否かの判断は、文教施設から適当な距離を有していることや、当該設置場所が主たる通学路に面していないかなどを総合的に判断して行うこととしている。さらに、文教施設として学校法人等が挙げられ、「適当な距離」について、「著しい影響を及ぼさない距離」をいい、「場外発売場の規模、位置、道路状況、周囲の地理的要因等により大きく異なる」としている。

この139号通達は,上記のような法の規定や被侵害法益に照らせば,法の当然の解釈として,法5条1項が文教上の利益を著しく害される者を個別的に保護する趣旨であることを示す手がかりといえ,かかる者に原告適格が認められると考える。

(5)X1は,法科大学院Sを設置しており,設置地点は,本件施設から400メートルの地点にあり場合によっては施設の騒音が届きうる距離である。

また,この地点は,最寄り駅から本件施設に向かう県道の途中にあることから,本件施設の利用者がSの前を通行し,P駅周辺の飲食店に滞留することが予想される。加えて,本件施設は施設面積3万平方メートルを誇る等大規模な施設であることから,利用者の数も相当数にのぼるものと考えられる。さらに,本件施設は350日も営業しており,その状況はほぼ1年中つづき,講義の時間に重なるばかりか,そのうち300日はナイター営業であり午後9時頃に退場者が集中することからすれば,司法試験合格を目指して朝早くから夜遅くまで講義室や自習室で勉強している平均的な司法試験受験生に対する影響は甚大である。

以上から,X1は文教上著しい不利益を受けるおそれがあり,原告適格が認められる。

3 X2について

X2はQ地点から約200メートルという比較的近い距離に居住しており,一定の騒音等の生活環境の利益が害されうる可能性はある。しかし,生活環境利益は生命身体等に比して要保護性に劣る利益であり,個別法に手がかりがない限りは原告適格を肯定することはできない。そこで,個別法令をみると,規則11条2項1号が見取り図への明記を要求しているのは,文教施設及び医療施設にとどまり,住居については一切触れられておらず,他に生活環境利益に配慮する規定は見受けられない以上,当該利益をもって原告適格を認めることはできない。

また,136条通達,513号通達では,「場外発売場の所在する自治会等の同意」を要求していることから,自治会の構成員としての利益の観点から原告適格を肯定できないか問題となるも,これらの通達は行政規則にとどまるうえに,当該利益に配慮した規定は根拠法令では見受けられない以上,当該利益を根拠に原告適格を肯定することはできない。

以上より,X2には原告適格は認められない。

第2 説問2(1)

1 考えられる訴訟

取消措置を受けるおそれを除去するための訴訟としては、取消措置の差止訴訟(3条7項)、要求措置に従う義務がないことの確認を求める実質的当事者訴訟(4条後段)が考えられる。

2 取消措置の差止訴訟

「重大な損害」(37条の4第1項)は,事後の取消訴訟と執行停止では権利救済が可能といえない場合に認められる。

本件では、生命・健康という最重要な法益ではなく財産権への侵害が問題であるうえ、Aが施設工事に着手していないという状況がある。しかし,設問2(2)で後述するように本件施設には多大な費用・労力が費やされていると考えられ,取消措置の取消訴訟と執行停止によっては投下資本の回収ができず権利救済ができないおそれがあり,この要件を満たす。他の訴訟要件については,特段問題がないため,差止訴訟を適法に提起することが可能である。

3 実質的当事者訴訟本件では,対象選択と即時確定の利益に関しては問題ない。もっとも,上記差止訴訟との関係で方法選択の適否が問題となりうるが、実効的な権利救済の観点からは差止訴訟が選択可能だからといって当事者訴訟を否定すべきでない。したがって,本件では実質的当事者訴訟の訴訟要件を満たす。

3 比較

確認にとどまらず、「取消措置」を直接の対象とする点においては実効性の観点から差止訴訟に分があるものの,いずれも訟要件も満たすものと考えられるので,結論としては,上記二つの訴訟を並列的に提起すべきであると考える。

第3 説問2(3)

1 地元同意を許可要件とすることの可否

(1)裁量の有無及び広狭

法5条2項及びその委任をうけた受けた施行規則12条1項においては,自治会の同意は許可要件とされていないところ,自治会の不同意を理由に許可を拒否することができるか。

法5条2項の「基準に適合する場合に限り」の部分は最低限の要件を定めたものとみることができるうえに,同項では「できる」との文言が使われている。また,本件許可は富くじ罪という本来刑事責任を問われる行為について例外的に違法性阻却するものであって,特許類似の性質を有する。したがって,本件設置許可には広範な裁量が認められ,条文によって定められた基準以外の理由で拒否する裁量が認められる余地がある。

(2)通達

もっとも,地元同意は1号・3号通達(以下,本件通達)に基づくものであり,これらの通達は,単なる行政規則に過ぎない。したがって,本件通達は外部効果を有さないのが原則である。

しかし,上記のような広範な裁量を前提とした上で,住民自治の重要性も加味すれば,本件通達は法5条2項に基づく裁量権行使において,一応の合理性を有した裁量基準を定めたものであるといえ,地元の同意を裁量権行使の考慮要素と考えることができる。

しかし、これをこえて、一律に同意の有無により制限のない拒否権を地元自治会に与えることは,裁量権の逸脱・濫用になりかねない。よって、地元の同意は,あくまでも裁量権行使の考慮要素となしうるにとどまるものと考える。

(3)要求措置

上記の通り,地元の同意はあくまでも裁量権行使の考慮要素の一つにとどまるものであり,要求措置は行政指導としての性質を有するにとどまる。したがって,要求措置に従う意思がないことを表明した後も要求措置を継続した場合は,行手法33条に反し違法になる。また,要求措置に従わなかったことを理由に,職権取消をしたと評価される可能性もあり,その場合には行手法32条2項違反となる。

(4)取消措置

では,要求措置の継続が許されないとして、取消措置をすることは適法か。

本件取消措置は、仮に地元同意が重要な考慮要素であり裁量権行使において本来許可されるべきではない(許可処分が裁量権の逸脱濫用にあたり違法な)場合にあたるのであれば,いわゆる職権取消にあたる。そして,一般に処分に原始的瑕疵があるのであれば,法治主義の原則に基づき原則として職権取消ができる。もっとも,本件取消措置は、受益的行政処分を取り消すものであることから、被処分者の利益保護の観点から被処分者の不利益を考慮しても、なお取り消すべき公益上の必要性が認められる場合にのみ許されると解する。

本件では,Aは本件施設の工事にいまだ着手していないものの,本件施設設置に向けての土地の購入や,請負契約の締結,従業員の確保等の準備に多大な費用・労力を費やしているものと考えられ,職権取消によるAの不利益は重大なものといえる。他方で,確かに,地元の同意が得られていないことは住民自治の観点からすれば公益を損なう。しかし,住民自治の同意はあくまで広範な裁量を前提とした考慮要素にとどまるものであり,仮にその欠缺が違法を導くとしても,絶対的に重視しなければいけないものではない。したがって,上記のAの不利益を考慮してもなお取り消すべき公益上の必要性までは認められず,取消措置は違法となる。

第4 説問3

1 規定の骨子

まず,実効性確保のための規定として,許可後の是正命令、罰則などの規定を定めることが考えられる。

次に,住民及び事業者の利害の調整手段については、住民等の利害関係者から意見を聴取する公聴会や,専門家等も踏まえた審議会を設ける規定をおくことが考えられる。

2 条例の問題点

当該条例の問題点としては,当該条例がモーターボート競争法の「法律の範囲内」(憲法94条)かが問題となる。具体的には,条例が法令に違反するか否かは両者の趣旨,目的,内容及び効果を比較し矛盾抵触があるかによって判断され,特定事項について法令と条令が併存する場合でも,条例が法令と別の目的を意図しており法令の目的・効果を阻害しないときや条令と法令が同一目的でも法令が地方の実情に応じた規制を容認する趣旨であれば,矛盾抵触はない。

当該条例の目的は、周辺環境との調和を目的としていると考えられる。他方で,法の目的は、船舶等の改良や輸出振興そのほかの海事に関する事業の施行、観光や体育事業そのほかの公益の増進、地方財政の改善であり(法1条)、周辺環境との調和という目的は含まれていない。したがって,両者の目的は異なる。もっとも,T市において周辺環境と調和しないと判断した場合、法令の要件を満たす場合にも場外発売場の建設ができなくなることから、法の目的と効果を阻害するとされる可能性がある。                             

                

  

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