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平成23年司法試験 民事訴訟法 参考答案

2026年8月16日

参考答案, 司法試験

第1 設問1

1 権利自白とは、請求の当否の判断の前提をなす先決的な権利・法律関係についての自白をいうところ、本件で被告Cは、第1回口頭弁論期日において、Aが甲土地を現に所有していることを認めているから、現在のAの甲土地所有権についてCは権利自白を行ったといえる。

2 それでは、Cの権利自白につき撤回禁止効が認められるか。

(1) 事実の自白がなされると、不要証効(179条)が生じ、また、当事者間に争いのない事実は、そのまま判決の基礎としなければならない(弁論主義の第2テーゼ)ことから、審判排除効が生じる。そして、審判排除効や、不要証効が生じた事実については、当事者は証拠の収集や保全に全力を尽くさなくてよくなる。そのような当事者の信頼・期待を保護することが、事実の自白に撤回制限効が生じる根拠である。

(2) それでは、まず、Cの行った権利自白につき上記根拠が妥当するとして撤回禁止効がみとめられるか。

ア 法の解釈・適用は裁判所の専権事項であることから、原則として権利自白の審判排除効・撤回禁止効は否定すべきと考える。もっとも、所有権は理論上原始取得の原因事実およびそこから現在の所有者に至るまでの承継取得原因事実を主張立証しなければならないところ、これは実際上困難であるため、権利自白を認めて主張立証の負担を軽減する必要性が高い。また、所有権は日常的に用いられる法律概念であり、一般人がその内容をよく理解しているといえるため、その所在の判断は比較的容易であり、当事者の支配権能を認めやすい。そうすると、当事者が所有権の取得について立証する必要がなくなったことに対する信頼は、通常の主要事実についての自白と同様に存在するといえるから、信頼を保護する必要性が高い。そこで、所有権に限定して例外的に権利自白に審判排除効・撤回禁止効を認めるべきである。

イ 本件でも、被告Cの、現在のAの甲土地所有権についての権利自白には、審判排除効・撤回禁止効が認められる。

3 したがって、被告側の権利自白の撤回は許されない。

第2 設問2

1 独立当事者参加(民事訴訟法(以下法名略)47条1項)

(1) 「訴訟の目的の全部若しくは一部が自己の権利であることを主張する第三者」といえるには、一挙に紛争が解決されることを企図した独立当事者参加の制度趣旨から、他人間の訴訟における請求と、参加人の請求とが論理的に両立しえない関係にあることが必要と考える。

(2) 本件では、Fの債権者代位訴訟は、Aの土地所有権に基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記手続請求権を代位行使するものである。また、すでに継続しているBのCに対する請求も、訴訟物は同一のAの土地所有権に基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記手続請求権であって、Bの訴訟における請求とFの請求とは、論理的に両立し得ない関係にはない。

 また、債権者代位訴訟における代位債権者は、法定訴訟担当として、債務者に代わって訴訟を追行する権限を有しているのであるから、債務者が無資力である場合、他の債権者は同様に債権を代位行使することが可能となる。したがって、債権者代位訴訟が提起されていても、他の債権者の債権者代位訴訟の権限が失われるものではないから、BF両債権者に当事者適格が認められるため、当事者適格の次元においても、Bの訴訟における請求とFの請求とは、論理的に両立し得ない関係にはない。

(3) よって、Bの訴訟における請求とFの請求とは、論理的に両立し得ない関係にはなく、Fは「訴訟の目的の全部若しくは一部が自己の権利であることを主張する第三者」とはいえないため、権利主張参加としての独立当事者参加は認められない。

2 共同訴訟参加(52条1項)

(1) 共同訴訟参加は、「合一のみに確定すべき場合」に認められることから、参加の結果として類似必要的共同訴訟となる場合に認められる。そして、類似必要的共同訴訟となるためには、まず、各共同訴訟人は当事者として訴訟に関与するのであるから、①当事者適格を有することが必要である。また、合一確定の要請が働く場合というのは、同一人における判決の効力の衝突を避けなければならないという要請が働く場合をいうから、②共同訴訟人の1人が受けた判決効が他の共同訴訟人にも及ぶ場合にのみ類似必要的共同訴訟によるべきであることになる。

(2) 本件では、まず、債権者代位訴訟における代位債権者の地位は法定訴訟担当であるから、Bによる債権者代位訴訟の結果は、有利不利問わずに債務者Aに及ぶ (115条1項2号)。そして、その債務者への判決効の拡張の反射的効果として、他の当事者適格者にも判決効が及ぶ(②)。また、Fは債務者Aに対して金銭債権を有しており、Aが無資力である以上、債権の代位行使をすることができるから、法定訴訟担当者として当事者適格を有する(①)。

(3) よって、参加の結果として類似必要的共同訴訟となる場合であるといえるから、「合一のみに確定すべき場合」にあたり、共同訴訟参加が認められる。

第3 設問3

1 Mの本訴請求の認諾について

 Mの本訴請求の認諾がいかなる効力を有するかについて、本訴請求が通常共同訴訟と固有必要的共同訴訟のいずれにあたるかが問題となる。

(1)  民事訴訟は、実体法上の権利の実現・処分の過程であることから、当事者適格の選別についても実体法上の管理処分権の帰属態様が基準となるはずである。もっとも、当事者適格は訴訟追行権という訴訟上の権能のかかわる問題でもあるため、訴訟政策的判断が不可欠である。そこで、実体法上の管理処分権の帰属態様を基準としつつ、訴訟法上の観点も加味して判断すべきであると考える。

(2) 本件では、当然承継(124条1項から推知)後の本訴請求は、LとMが丙建物を共有していることを前提とした乙土地の所有権に基づく丙建物収去乙土地明渡請求である。建物収去土地明渡義務は不可分債務(民法430条)であるところ、土地所有者は建物共有者に対して各別に請求できる(民法432条)。また、建物の共同所有者を具体的に把握することの困難を考えれば、固有必要的共同訴訟とするのはいたずらに原告Nに大きな負担を課すこととなる。したがって、本訴請求は、通常共同訴訟である。

(3) そうすると、共同訴訟人独立の原則(39条)の下、Mの本訴請求の認諾はMとの関係でのみ効力を生じ、Lとの関係では効力を生じない。

2 Mの中間確認請求の放棄について

Mの中間確認請求の放棄がいかなる効力を有するかについて、本訴請求が通常共同訴訟と固有必要的共同訴訟のいずれにあたるかが問題となる。

(1) 上記の基準で判断する。

(2) 本件では、当然承継後の中間確認請求は、乙土地をLおよびMが共有することの確認を求めるものである。かかる請求は数人が共同して有する一個の所有権、すなわちいわゆる共有権の確認であるところ、共有物たる乙土地全体につき共有者全員で1個の管理処分権を有することから、中間確認請求は、固有必要的共同訴訟となる。

(3) そうすると、Mの中間確認請求の放棄は、他の共同訴訟人たるLに不利なものであるため、MとLのいずれの関係においても効力を生じない(40条1項)。

3 結果の妥当性

 以上からすると、中間確認請求が認容され、この判決が確定した場合には、Mは乙土地の共有者であるにもかかわらず、Nに対して乙土地の明渡義務を負うという、実体法上矛盾した結果を生じることになる。

 もっとも、NはMの認諾調書(267条参照)のみではL・Mに対して土地明渡しの強制執行をすることができない以上、上記結果によって不都合な事態が生じるわけではなく、妥当なものといえる。

  

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