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平成25年司法試験 商法 参考答案

2026年9月1日

参考答案, 司法試験

第1 設問1

1 株式譲渡の効力について

⑴ 甲社は株券発行会社(会社法(以下法名略)214条、定款7条)であり、EはFに株券を交付しているから、当事者間において株式譲渡の効力は生じている(128条1項本文)。

⑵ 甲社は非公開会社(定款5条、2条5号参照)であり、株式譲渡につき取締役会の承認を受ける必要があるところ(定款8条、136条、139条)、Eが譲渡承認請求をしてから何ら連絡がないまま2週間が経過しており、甲社はEF間の株式譲渡を承認したとみなされるように思える(145条1号)。

もっとも、取締役AがFの株式取得について承認されないことを懸念し、あえて取締役会への上程を回避している。かかる場合にも、同号によりみなし承認の効果は生じるか。

ア 同条の趣旨は、譲渡承認請求者がいつまでも譲渡承認が受けられず浮動的な地位に置かれることを防止し、株式譲渡当事者の利益を保護し株式譲渡自由の原則(127条)を維持する点にある。そして、株主保護を目的とする規定の適否が、取締役会開催の有無という内部的問題に左右されるのは、落ち度のない株主譲渡当事者の利益が一方的に犠牲となり不合理である。そこで、譲渡承認決定を受けられないことにつき株式譲渡当事者に帰責性がない限り、みなし承認の効果は生じると解する。

イ EF間の譲渡承認請求の案件が取締役会に上程されなかったのは、取締役Aの個人的な思惑からなされた会社内部の事情にすぎず、譲渡人Fは何ら関知しえない事情であるため、上程されなかったことにつきFに帰責性はない。したがって、みなし承認の効果が生じる。

⑶ よって、EF間の株式譲渡の効力は甲社に対しても生じる。

2 Fを株主として取り扱うことの可否について

 甲社は、株主総会の議決権行使につき基準日(124条)を定めておらず、総会日当日の株主たるFに議決権行使させることができるところ、株主名簿書換え(130条2項)が未了であるFも株主として取り扱うことができるか。

⑴ 同条の趣旨は、多数の変動しうる株主についての集団的法律関係を画一的に処理する会社の便宜を図ることにある。また、名義書換えは株式譲渡の対抗要件に過ぎず、効力要件ではない。そこで、会社が自己の責任の下、名義書換未了の者を株主として扱うことは許されると解する。

⑵ よって、甲社がFを株主として取り扱うことは認められる。

第2 設問2小問⑴

1 本件報酬決議の効力を否定するために、「株主」Bは本件報酬決議がなされた平成25年3月16日から「3カ月以内」に本件報酬決議(361条1項)の取消しの訴え(831条1項)を提起することが考えられる。

 以下では、取消事由の有無につき検討する。

⑴ 報酬決議をした点

ア 取締役会設置会社である甲社では(定款8条1項)、「株主総会の目的である事項」(298条1項2号)以外は決議をすることはできないにもかかわらず(309条5項本文)、平成25年総会において招集通知に記載されている①②の事項以外である取締役の報酬引き上げという議題について決議しており、「決議の方法が法令…に違反」している。(831条1項1号)。

イ 309条5項の趣旨は、予め議題を通知して株主に議決権行使の準備の機会を与えることにあり、これを欠くことは議決権行使という株主にとって重要な利益が保障されていないことになるので、かかる違反は「重大でな」いとはいえない。したがって、裁量棄却は認められない。

⑵ AがQが有していた株式のBによる行使を認めなかった点

議長AはBを権利行使者(106条本文)として指定した120株を無効と扱っているところ、Bが有効な権利行使者であればAの措置は株主の議決権行使の機会を奪っており(105条1項3号)、「決議の方法が法令…に違反」する(831条1項1号)。そこで、B・Cの合意のみにより、Bを権利行使者とした定めは有効か問題となる。

ア 株式を共同相続した場合、共同相続人間の準共有になるところ(民法264条)、106条本文は準共有株式の権利行使方法について、民法の共有の規定に対する「特別の定め」(民法264条ただし書)を設けたものと解される。そして、権利行使者の指定は、共有物の管理行為(同252条本文)に当たると解される。なぜなら、権利行使者の指定は会社の事務処理の便宜を考慮して設けられたものであるところ、権利行使のために準共有者の全員一致が必要であるとすると、会社の運営に支障を来し、規定の趣旨に反するからである。したがって、持分の過半数の同意を得れば、106条本文に反しないと解する。

イ AないしCの持分は各3分の1(民法900条4号本文)であり、BとCの持分により過半数に達するため、本件権利行使者の指定は106条本文に反せず、有効である。 

したがって、Aの上記措置は831条1項1号に該当する。

イ そして、Bの上記議決権行使を有効とすれば、反対票が合計520個となり、賛成票の480個を上回るのであるから、「決議に影響を及ぼ」すといえ、裁量棄却は認められない(831条2項)。

⑶ Aが議決権を行使した点

本件決議は、Aを「特別の利害関係を有する者」(特別利害関係人)とする「著しく不当な決議」として831条1項3号事由に該当しないか。

ア 特別利害関係人とは、当該決議事項につき、株主としての地位を離れて個人的な利害関係を有する者をいう。

イ 本件では、報酬総額を定めたにすぎず、同じ取締役BないしDも、報酬増額の恩恵にあずかる可能性があるため、Aのみ株主の地位を離れて個人的な利益を得られるとはいえず、特別利害関係人にはあたらない。

よって、本件報酬決議には831条1項3号に当たらない。

2 以上より、Bは、⑴⑵を取消事由として主張すればよい。

第3 設問2小問⑵

1 甲社は、Aらが報酬という「利益」を受けた「ために」、甲社に報酬相当額の「損失」が生じたとして、Aらに対し、報酬相当額の不当利得返還請求をすることが考えられる(民法703条)。そこで、Aらの受益につき「法律上の原因」の有無を検討する。

⑴ 平成25年総会の報酬増額決議が取消された場合、当該決議は遡及的無効となるため(839条反対解釈)、取締役の報酬は平成23年総会決議に従って総額6000万円以内でなければならない。しかし、平成25年取締役会決議では報酬総額2億6700万円と定めていることから、同年取締役会決議の効力が問題となる。

ア 甲社では従前から取締役に報酬が支払われており、平成25年取締役会決議は、従前の6000万円の分配と新たに配分が可能となった2億700万円の分配という二つ意味があると考えられ、平成25年取締役会決議は従前の6000万円分についても判断しているといえる。

イ したがって、平成25年取締役会決議は、総額6000万円を前提にした範囲については、なお有効と解すべきである。

⑵ では、Aらはそれぞれいかなる範囲で報酬を保持できるか。

 上述の通り、平成25年取締役会決議は、総額6000万円の分配という意味を有していることからすれば、総額6000万円を前提にした平成23年取締役会決議を参照して各報酬額を考えるべきである。そして、同年取締役会決議によりAは2000万円を分配され、その後役職の変化や業績の大幅な変化などないことからすれば、平成25年取締役会決議も従前と同様、Aに2000万円の報酬を支給するものといえる。他方、B・Cに従前と同様の報酬が支払われていることからすれば、新たに報酬を得るD・Gは増額部分により報酬が支給される予定だったといえる。したがって、平成23年取締役会決議においてD・Gの報酬額は決定されておらず、D・Gが報酬として保持できるのは0円である。

 よって、甲社は、Aに対して1億8000万円、D・Gに対して各2000万円の不当利得返還請求をすることができる。

第4 設問3

1 ①について

⑴ 「株主」Bは、本件募集株式の発行が「著しく不公正な方法」にあたるとして、Y社に対し、本件募集株式の発行の差止請求をすることが考えられる(210条2号)

ア 「著しく不公正な方法」とは、不当な目的を達成する手段として新株発行を利用する場合をいい、新株発行の主要な目的が現経営者の支配権維持目的である場合は、株主の利益保護の観点から新株発行を正当化する特段の事情なき限り、不当な目的にあたると解する。なぜなら、取締役が株主を選ぶという事態は、会社法の予定する権限分配秩序(329条1項参照)に反するからである。

イ Aは、自己の支配権を確立する主観で募集株式の発行に及んでいる。また、確かに、株主割当ては、すべての株主に申し込みの機会が与えられる以上、Aのみ支配権を拡大することはできないようにも思える。しかし、Aは、B・Cに対して、1株200万円という高額の払込金額につき通知後約2週間しか資金を調達する時間を与えないまま手続を完結させている一方で、自身は報酬を2億円に増額して払込金の原資としていることからも、自己のみが株主割当てを受けられるよう画策しているといえ、支配権確立を確実に成功させようとする意図が推認される。

 したがって、本件募集株式の発行は、Aの支配権確立を主要な目的として行われたといえ、「著しく不公正な方法」にあたる。

⑵ そして、本件発行によりAが新たに160株を取得し、その分Bの持株比率が低下するのであるから、「不利益を受けるおそれ」も存する。

⑶ よって、Bは募集株式の発行の差止めを求めることができる。

⑷ なお、Bは上記請求を被保全権利とする、本件募集株式発行の差止めの仮処分を申し立てるべきであり(民事保全法23条2項)、本件株式割当てによりBの持株比率が大幅に低下するため、保全の必要性も認められる。

2 ②について

Bとしては、非公開会社である甲社に対し(834条2号)、効力発生日である平成25年4月1日(209条1項1号)から「1年以内」であれば、本件募集株式発行の無効の訴え(828条1項2号)を提起できる。

⑴ 新株発行無効の訴えの無効事由について明文の規定なく問題となるところ、新株発行には多数の利害関係人が関与するため、法的安定性の要請を重視すべく、重大な瑕疵がある場合にのみ限られる。

⑵ 本件では、「著しく不公正な方法」とはいえ、新株発行は業務執行に準じるものであり、代表取締役Aが発行した以上、取引安全に重点を置くべきであるようにも思える。また、Bは上記仮処分の申し立てをすることで、新株発行による持株比率の低下を防ぐことは可能であった。しかし、甲社は非公開会社であり、発行された新株が転々流通する頻度は高くないため、取引安全の配慮の要請も乏しく、持株比率の維持が重要である。また、差止めの機会があったといえど、取締役会決議から払込期日まではわずか2週間しかなく、仮処分による救済は期待できない。

⑶ よって、本件募集株式の発行が「著しく不公正」であったことは、重大な瑕疵にあたり、新株発行無効の訴えの無効事由が認められる。

  

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