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【2026年ロースクール入試】中央大学 憲法 参考答案

2025年8月29日

お知らせ

こんにちは、be a lawyer編集局です。

今回は先日実施された2026年度中央大学のロースクール入試の憲法の参考答案例を公開いたします。

よろしければご覧ください。

第1 規定①について

1 規定①は、男性受刑者の髪型を自由に選択する自由を侵害し、違憲とならないか。

2 男性受刑者が髪型を自由に選択する自由は、憲法13条後段により保障されるか。

(1)まず、刑事施設収容者には人権規定が及ばないとする、特別権力関係論がある。もっとも、基本的人権の尊重の理念や法の支配の原理に反し、かかる論は妥当ではない。よって、個別具体的に人権制限の根拠を検討するべきである。

(2)憲法14条以下の個別的人権の規定は歴史的に重要な権利・自由を列挙したに過ぎず、人権の固有性からしても、これらの規定が全ての人権を網羅的に掲げていると解するべきではない。そこで、憲法13条後段の幸福追求権として、憲法上明文根拠のない新しい人権が保障されると解する。もっとも、人権のインフレ化を防ぐため、幸福追求権として保障されるのは、個人の人格的生存に不可欠な利益に限られると解する。

(3)髪型などの身じまいを通じて自己の個性を実現させ人格を形成する自由は、自己のアイデンティティを表明する一つの方法であるから、そのような性質を有する髪型に関わる自己決定権は、人格的生存に不可欠な利益といえる。したがって、男性受刑者が髪型を自由に選択する自由は、憲法13条後段により保障される。

3 規定①は、男性受刑者の髪型を、「原型刈り」、「前5分刈り」、「中髪刈り」の3種の中から強制的に決定させるものであるから、男性受刑者が髪型を自由に選択する自由を制約するものである。

4 では、かかる制約は正当化されるか。

(1)よど号ハイジャック記事抹消事件判決は、未決拘禁者の閲読の自由の制限について、受刑目的や、掲示収容施設の規律・秩序の維持に支障が生じる相当の蓋然性があると認められる場合であり、かつ、その制限の程度が、当該支障を除去するために必要かつ合理的な範囲に止まる場合に限られると示したと解される。。もっとも、閲読の自由は、憲法21条1項により保障される知る自由の中核をなす重要なものであるのに対し、髪型選択の自由は、数あるアイデンティティ表明方法の一つに過ぎず、閲読の自由ほどの重要性は認められない。そこで、監獄内の喫煙の自由について判断した判例に従い、監獄内の秩序を維持するという目的に照らし、必要かつ合理的な制限であれば合憲であると解すべきである。

 (2)以上の基準に従い、本件について検討する。

ア まず、監獄内の衛生を保つこと、及び機械への頭髪の巻き込みなどの危険を防 止したりするという目的は正当である。また、矯正処遇の効果を阻害されないという目的は、受刑制度の目的の核心部分であるからかかる目的も正当である。

イ 頭髪を短くすれば、汗やほこりを落とすことが容易になり、衛生を保つという目的に資する。また、頭髪の巻き込みによる事故を防ぐことができる。さらに、反社会的集団に属する者特有の髪型を選択することは矯正処遇の効果を阻害するから、かかる髪型を許さないことは矯正処遇の効果を阻害されないという目的に資する。

ウ 刑事施設では受刑者が刑務作業として多数の受刑者の長髪を行うのが通例だが、各受刑者が自由に髪型を選択すればかかる業務が滞り、その技量にも限界があるから、簡易な髪型に限定することは合理的な制限であるといえる。

エ 以上のように、規定①の規制は、監獄内の秩序を維持するという目的に照らし、必要かつ合理的な制限であるといえる。

5 よって、規定①は合憲である。

第2 規定②について

1 規定②は、性自認に従った法令上の性別の取り扱いを受ける自由を侵害し、違憲ではないか。

2 まず、性自認に従った法令上の性別の取り扱いを受ける自由は、人格的生存に不可欠なものであるから、かかる自由は憲法13条後段によって保障される。

3 規定②は、調髪を行わないことが処遇上有益であると認められる場合という例外的な場合を除いて男子受刑者と同様に調髪を強制するものである(受刑者処遇法(以下「法」という。)58条1項)一方、女子受刑者は、華美にわたることなく、清楚な髪型とする(同2項)と定められており、性同一障害者等受刑者について原則として短髪を強制するものであるから、上記の自由を制約している。

4 では、かかる制約は正当化されるか。

(1)性自認に従った法令上の性別の取り扱いを受ける自由は、人格的生存の根幹をなす性質の自由であり、アイデンティティの表現の一方法に止まらない重要なものである。そこで、よど号ハイジャック記事抹消事件判決に従い、受刑目的や、刑事収容施設の規律・秩序の維持に支障が生じる相当の蓋然性があると認められる場合であり、かつ、その制限の程度が、当該支障を除去するために必要かつ合理的な範囲に止まる場合に限り正当化されると解する。

(2)以上の基準に従い、本件について検討する。

ア 調髪の制度趣旨について、まず、長髪のままでいることによって刑事施設内の衛生環境が悪化する蓋然性は認められない。また、法57条1号に定められた3種の髪型に限らずとも、機械への頭髪の巻き込みなどの危険を防止することは可能であるから、髪が長いことによる危険発生の蓋然性は認めらない。さらに、反社会的集団に属する者に特有の髪型を個別に禁止すれば足りるのであるから、3種の髪型に限ることは必要かつ合理的な範囲に止まるとはいえない。

イ 以上より、制度趣旨のいずれについても、規定②の制約は正当化されない。

5 よって、規定②は違憲である。

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