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日大ロー令和5年度(2期)入試解答例

2025年11月22日

参考答案

憲法

1.A市営住宅条例における、入居者が暴力団員であることが判明した場合に、当該入居者に対し、当該市営住宅の明渡しを請求することができる旨の規定(以下、本件規定)は、A市営住宅の入居者について、暴力団員と非暴力団員を「差別」するものとして、憲法14条1項に反し違憲ではないか。

2.まず、「法の下に平等」とは、法適用の平等だけでなく法内容の平等も含まれると解する。違憲審査権(81条)により、立法権を含むあらゆる国家権力から人権の不可侵性が保障されていることと、内容の不平等な法を平等に適用しても平等の保証は実現されず個人尊厳の原理(13条前段)が無意味に帰するからである。

3.そうすると、暴力団員には、非暴力団員との関係で、A市営住宅の居住についての規定の内容で平等に扱われるという意味での「平等」権が認められる。

4.次に、本件規定は、暴力団員であるA市営住宅の入居者について、その明渡しを請求することができるとすることで、非暴力団員との関係で暴力団員を、その市営住宅での居住について区別している。

5.そして、平等の理念(14条1項)は、個人尊重の原理(13条前段)に由来するものであるから、同条の「平等」は、事柄の性質に即応した合理的理由のない差別を禁止する相対的平等を意味すると解される。では、前記区別について、合理的理由は認められるか。

(1)市営住宅の供給・管理は住生活基本法に基づき、低額所得者等の居住の安定を図るという社会福祉政策の一環であるから、どのような条件で誰に公的資源を配分し、どのような場合に共同生活の秩序維持のために退去を求めるかは、政策的・財政的判断を要する領域であり、条例制定権者であるA市議会に広範な裁量が認められるべきである。

一方、市営住宅は、住宅が国民の健康で文化的な生活にとって不可欠な基盤であることにかんがみて設置されるものであるから、市営住宅に居住することは、市民が25条で保障される「健康で文化的な最低限度の生活」を営む上で、重要な利益だといえる。

そして、本件規定の区別事由は「暴力団員であること」であるが、これは自己の意思や努力で脱却できない属性ではない。暴力団への加入・離脱が本人の意思に基づく選択である点からすれば、国籍法違憲判決が採用したような慎重な審査は要求されないと解すべきである。

そこで、本件規定の合憲性は、①区別の目的が正当であり、②手段が目的との間で合理的関連性を有するかで審査すべきである。

(2)市営住宅制度の目的は、住生活基本法の下、低額所得者、被災者その他住宅の確保に特に配慮を要する者(以下、要配慮者)の居住の安定の確保である。その対象が経済的・社会的に弱い立場にある要配慮者であることからすれば、居住の安定の確保とは、物理的な住居を提供することのみを意味するものではなく、要配慮者が脅威や不安を感じることなく、平穏かつ安全に生活を営むことができる環境を確保することであると解される。

そうだとすれば、かかる市営住宅制度の施策の一環として作成された本件規定が、市営住宅から暴力団を排除することを定めるのも、他の居住者の平穏かつ安全な生活環境を確保することが目的であると考えられる。この目的は正当であるから、区別の目的は正当であるといえる(①)。

本件規定が対象とする「暴力団員」とは、暴力的不法行為等を助長するおそれのある反社会的団体の構成員である(暴力団対策法参照)。このような暴力団員が社会的・経済的に弱い立場にある要配慮者が多く居住する市営住宅に入居することは、他の入居者に畏怖の念や不安感を与えるため、具体的な威圧行為等がなくとも、暴力団員の居住自体が要配慮者の精神的平穏を害し、彼らの居住の安定を類型的に脅かす危険が高いといえる。そのため、暴力団員に対して市営住宅の明渡しを請求することによって、市営住宅から暴力団員を排除することを可能にする本件規定は、上記目的の達成を促進するといえ、関連性が認められる。

ここで、暴力団員による具体的な威圧行為等が現に存在しないにもかかわらず、暴力団員という属性のみを理由として明渡しを請求するのは、必要性を欠く過剰な規制であるとの反論が考えられる。しかし、社会的・経済的に弱い立場にある要配慮者の特性に照らすと、仮に暴力団員による威圧行為等が実際に発生した場合でも、他の入居者は報復を恐れて被害を申告できないおそれがある。そのような状況では、行政が威圧行為等の存在を把握すること自体が困難となり、事後的な対応では目的の達成が困難となるおそれがある。したがって、このような事態を未然に防ぐために、暴力団員の属性に着目して予防的に排除できるよう定めた本件規定は、立法裁量の範囲内にとどまるものといえる。

また、本件規定によって制約される利益は、暴力団員である入居者の市営住宅に居住し続ける利益である。これは暴力団員の生存権(25条)を保障する上で重要な利益ではあるが、その属性は人種や性別と異なり本人の意思によって離脱が可能であり、制約の範囲もあくまでA市営住宅に限定されている。一方、本件規定により得られる利益は、要配慮者である他の全入居者の平穏かつ安全な生活環境という重要な法益である。したがって、本件規定によって得られる利益と失われる利益の均衡も保たれているといえ、手段の合理的関連性が認められる(②)。

6.よって、本件規定は、14条1項に反せず合憲である。

日大ロー 令和5年 第2期 民法

(設問1)

1.BのCに対する本件絵画の返還請求の法的根拠は、民法200条1項に基づく占有回収の訴えである。同条は、「占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還・・・を請求することができる。」と規定する。したがって、①請求者が「占有者」であること、②物の「占有を奪われた」ことを要件とする。

2.本件絵画はもともとAが占有していたものである(180条)が、Aは平成23年5月に死亡している。Bは、Aの唯一の相続人であるから、Aの有していた本件絵画の占有権を相続する(882条、887条1項、896条)。したがって、Bは、本件絵画の「占有者」である。

 また、Cは、誰の許可も得ずに本件建物に立ち入り、本件絵画を持ち出している。Cは、生前Aにお金を貸していたというが、このことが持ち出しの正当性を基礎づけることはない。ゆえに、Bは本件絵画の占有をCに奪われたといえる。

3.以上から、Bの請求は認められる。

(設問2)

1.DのBに対する本件請求の法的根拠は、所有権(208条)に基づく返還請求権としての本件土地明渡請求である。問題文によれば、AD間の本件売買契約は無効であるから、本件土地の所有者はDであって、その土地上に建物を所有しているBは土地の占有者となるため、同請求の請求原因を満たす。

2.これに対して、Bとしては、本件土地を時効取得した(162条2項)として、Dの所有権は喪失しているとの抗弁を主張することが考えられる。

 同項は、「十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。」と規定する。

このうち、「所有の意思」とは、自分が所有者として物を排他的に支配しようとする意思であって、租税公課の負担をしているなどがこれを肯定する事情となるところ、本問におけるBは固定資産税を支払っていることから、所有の意思を肯定することができる。また、「占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。」(186条1項)ところ、本問においてBに推定を覆す事情はない。さらに、Bは、Dとの面識がなく本件土地はAの所有物であると信じていたのであるから、Bの占有開始時は無過失であるといえる。そこで、本問では、10年間の占有が認められるかが問題となる。

3.187条1項は、「占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。」と定めるところ、「前の占有者」であるAは本件土地売買契約が無効であることを知りながら本件土地を占有しているのであるから、これを併せて主張すれば、「善意」ではなくなってしまい、時効取得が成立しない。しかし、上記の通り「占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張」することができるのであるから、「占有者の承継人」であるBとしては、自己の占有のみを主張することができる。そして、Bによる占有は、令和4年8月までに11年が経過している。

 以上から、Bには、本件土地の時効取得が成立する。

4.したがって、Dによる請求は認められない。

日大ロー 令和5年 第2期 刑法

第1 甲がAの本件自動車を運転した行為について

1.甲による上記行為について、Aに対して窃盗罪(235条)が成立しないか。

 同条は、「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪」が成立すると定められている。このうち「他人の財物」とは、他人の占有する他人の所有物である。また、「窃取」とは、占有者の意思に反して当該財物の占有を自己又は第三者の実力支配下に移すことを指す。

 本問において、本件自動車はAの所有物である。また、本件自動車は、ガソリンスタンドの駐車場に止められていたのであるから、本件自動車に対してAの占有が認められる。そのうえで甲は、Aに無断で本件自動車の運転しているのであるから、「窃取」したといえる。

2.窃盗罪の成立には、主観的要件として同罪の故意の他に、不可罰的な使用窃盗と窃盗罪の区別、窃盗罪と毀棄罪の区別を可能にするために不法領得の意思が必要となるが、その内容は、①権利者を排除して他人の物を自己の所有物として(権利者排除意思)、②当該物から生ずる効用を利用・処分する意思(利用処分意思)である。

 本問では、甲は本件自動車を運転しているのであるから、自動車から生ずる移動の利便性を高めるという効用を利用しているといえ、②を認められる。もっとも、甲は、本件自動車を5時間ほどで返却しようとしたのであって、①が認められないように思える。しかし、Aは本件自動車を深夜に駐車場に止めていたとはいえ、250万円もする本件自動車を合計5時間の利用阻害を生じさせているのであって、さらに自動車にためられていたガソリンについては消費したままとなっている。このことからすれば、①を認めることができる。

 そして、甲において同罪の故意にかけることはない。

3.以上から、甲には、Aに対して窃盗罪が成立する。

第2 甲が本件トイレの壁に文字を書いた行為について

1.甲による上記行為に、器物損壊罪(261条)が成立しないか。

 同条は、「他人の物を損壊し・・・た者」に同罪を成立させると定める。

 本件トイレは、「他人の物」であることが明らかであるところ、物理的な損壊がない文字を書くことが「損壊」に当たるかが問題となる。

2.この点「損壊」とは、財物の効用を害する一切の行為を指すものと解する。なぜなら、器物損壊罪の保護法益は、財物の効用にあり、物理的な損壊がなくとも、判例であるように食器に尿をかけるなどして当該財物の効用を失わせることができるからである。

 本問では、本件トイレにラッカースプレーで文字を書いたにすぎず、消すことはできないものの再塗装をすれば元通り使えるともいえる。しかし、その費用として7万円を費やす必要があるし、そもそも本件トイレが外観や美観を工夫して建造されたものであることからすれば、文字を書いた行為は、本件トイレのトイレとしての効用は損なわないとしても、外観や美観を含めた芸術品としての効用を損なうものといえる。

 したがって、甲が文字を書いた行為は「損壊」にあたる。

 そして、甲において同罪の故意を欠くことはない。

3.以上から、甲には、器物損壊罪が成立する。

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