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刑法の答案作成方法と勉強方法とは?

2026年4月26日

勉強法

Ⅰ 答案作成方法について

第1 敵を知る―出題趣旨・採点実感等からみた「刑法」の問題で問われているもの

まず、司法試験における刑法においてはどのような答案が求められているのかを把握しなければどのような答案を書けばよいのかはわからない。そこで、出題趣旨・採点実感等において試されているものを概観してみる。

●平成27年司法試験の出題趣旨(刑事系科目第1問) 「具体的事例について,甲乙丙それぞれの罪責を検討させることにより,刑事実体法及びその解釈論の知識と理解を問うとともに,具体的な事実関係を分析してそれに法規範を適用する能力及び論理的な思考力・論述力を試すものである。」
●平成27年司法委試験の採点実感等に対する意見(刑事系科目第1問)「具体的事例に基づいて甲乙丙それぞれの罪責を問うことによって,刑法総論・各論の基本的な知識と問題点についての理解の有無・程度,事実関係を的確に分析・評価し,具体的事実に法規範を適用する能力,結論の具体的妥当性,その結論に至るまでの法的思考過程の論理性を総合的に評価することを基本方針として採点に当たった。」

上記の出題趣旨等によれば答案では以下の①~④が求められていると考えられる。

①刑事実体法及びその解釈論の知識と理解を示すこと【知識】

②具体的な事実関係の分析を前提とした、法規範の適用をすること【事案分析】

③①と②前提とした導き出した結論が妥当であること【結論妥当性】

④論理的に思考し・論述していること【論理】

そして、刑法の答案においては①②中心であり、いずれか一方しか書かない若しくはいずれか一方のみを厚く書くのであれば刑法答案として合格レベルとはいえない(いわば、①②は車の両輪)。また、司法試験は実務家登用試験である以上、③が必要であり、法律答案である以上は法的三段論法(詳しくは後述)に従った論理的な文章で表現する必要がある(④)。したがって、刑法の答案を作成する際には、これらの点を意識するようにしてほしい。

第2 司法試験における答案作成上の注意点(一般論)

1 ペース配分

(1)ペース配分の意義

司法試験の問題を解くうえで「ペース配分には気を付けろ」とよく言われる。では,なぜペース配分に注意しなければならないのだろうか?その答えは,以下の点にあると講師は考えている。

【ペース配分の意義】

①途中答案を回避することができる②竜頭蛇尾答案(=最初だけがっつり書いて,最後の方は実質的に途中答案)を回避することができる③設問3など後半の問題に基本的な問題(=簡単な問題)が配置されている場合(例えば,平成27民法,平成26行政など)に,そこをきっちり書くことができる

上記の意義からすると本番ではペース配分をきっちりできるかどうかという点が合否を分ける大きなポイントとなることが分かる。

(2)具体的な方法

STEP1:自分が書ける枚数、1枚書くのにかかる時間を知る

※理想は、刑法・刑訴…7枚、憲法・民法・商法…6枚、行政・民訴…5~6枚

書けないと落ちるとか、絶対点数が悪くなるとかではない。他方で8枚書いても点数が低い場合ももちろんある。ただ、このくらい書けないと、あてはめが薄くなり、質で勝負するしかなくなるから相対的に不利。

   

STEP2:問題文を読んで答案構成までに何分かかるか知る

 ※自分が書きたい枚数・書ける枚数との兼ね合いもあるので、一概には言えない。

上記の枚数を書くためには、刑事系25分以内、民法・商法・憲法30分程度、民訴・行政法40分程度が目安。

STEP3:以上を元にタイムスケジュールを決める!!

◆配点の割合が示されている科目(民事系・公法系)の場合

配点の割合で枚数と時間を割る

(例)平成27年商法 設問1:設問2:設問3=4:4:2 試験時間13:15~15:15

答案構成30分=答案作成90分=自分が書ける枚数6枚(1枚15分)

設問1(40点) …2.5枚=37分/設問2(40点)…2.5枚=37分  

設問3(20点)…1.2枚=15分

⇒13:15-13:45 答案構成

13:45-14:22 設問1 14:22-15:00 設問2 15:00-15:15設問3

 

◆配点の割合が示されていない科目(刑事系)の場合

問題文を読んで自分で読み取る!ヒントは事実の分量、論点としての重要度。

(例)平成20年刑法の場合

甲と乙半々くらい→甲3.5枚、乙3.5枚

甲…住居侵入(0.3)、窃盗(0.8)、強盗致傷(1.3)、乙の強盗致死との関係(0.7)、罪数(0.3)

乙…住居侵入・窃盗の共謀共同正犯(1.2)、強盗致傷の共謀共同正犯(0.7) 事後強盗致死(1)、罪数(0.3)

2 三段論法

(1)原則

三段論法の原則的な流れは,(問題提起→)規範定立(=大前提)→あてはめ(=小前提)→結論であり,この形を崩さずに書くことを意識してほしい。以下,それぞれで気を付けてほしいことをまとめておく。

 【三段論法の注意点】

問題提起どうして本問の事実を前提とするとその問題が生じると自分は考えたのか、条文の指摘や素直に解釈した場合の不都合性をコンパクトに示すようにしてほしい。 ※問題提起はただ書けばいいというものではない。問題提起は出題者の意図に気付いていることや当該論点について自分が理解していることを示す大事な部分であることから,事実をもとになぜその部分が問題となっているかを簡潔に示してほしい。
規範定立規範定立は当該問題解決のために必要な規範をコンパクトに書くようにしてほしい。また,規範を示す際には,できる限り理由を付すようにしてほしい。※もっとも,あらゆる場合に理由を付する必要はない。例えば,強盗罪の「暴行」の定義を示す際に理由を付する必要はない。なぜなら,判例の立場が固まっており,判例・学説共に争いがほぼないからである。ということは,解釈について争いがある場面では,「なぜその立場に立つのか」を示す必要があるため,理由付けを忘れないようにしてほしい。
あてはめ あてはめは,事実の摘示+評価→規範との対応という図式をきっちり頭に入れてほしい。なぜなら,あてはめとは、最も具体的な問題文中の事実に評価を重ねることによって、抽象度を挙げていき、最終的には要件という最も抽象度の高い要件へとつなげる作業だからである。 詳しくは後述の具体例を参考にしてほしい。
結論 三段論法で論じたというためには結論を示さなければならない。この部分は忘れやすいため,常に意識してほしい。

(2)例外

三段論法を守ることが非常に重要であるが,時間制限がある司法試験においてすべてを三段論法で論じることは困難である。また,すべてを三段論法で論じてしまうとメリハリのない答案になってしまう。

そこで,明らかに要件を満たす場合や当該問題においてあまり重要でない論点については三段論法をあえて崩すことも必要である。なお,三段論法を崩すといっても順番を入れ替えるだけで,書く内容がかわるわけではない。具体的には,「(事実)は(定義)にあたるから、(要件)を満たす。」というイメージである。  

【具体例】

AがBの顔面を殴ったことが「暴行」にあたるということを言いたい場合①三段論法を守る場合  「暴行」とは、不法な有形力の行使を意味する(=大前提)。本問においてAはBの顔面を殴打し、Bの身体に対し不法な有形力を行使している(=小前提)。よって、Aの殴打行為は『暴行』にあたる(=結論)。
②あえて崩す場合AはBの顔面を殴打し、Bに対し不法な有形力を行使しているから(=小前提をしめし,その中で大前提を分かっていることを伝える)、「暴行」を行ったといえる(=結論)

(3)あてはめのポイント―正しい事実摘示と評価

上述のように,あてはめとは最も具体的な問題文中の具体的事実に自分で評価を重ねることによって、抽象度を挙げていき、最終的には要件という最も抽象度の高い要件へとつなげる作業である

【事実の摘示と評価ポイント】

〔設例〕B(80歳)に殴られたA(20歳)が、防衛のためにBを投げ飛ばした場合に正当防衛の相当性が認められるかのあてはめをする場合

→規範は,「『やむを得ずにした』とは、正当防衛が正対不正の関係であることから、防衛行為が(必要最小限度であること,すなわち)相当性を有するこという」を前提とする。

<悪い例>

・「AはBよりも若く体力があるのに、Bを投げ飛ばしており‥‥」

↑具体的事実を摘示していない。問題文の事実を貼るように。

・「Bは80歳である一方、Aは20歳であるから、AがBを投げ飛ばすの…」

↑評価がない。80歳だから何なのか、20歳だから何なのか。

・「Bは80歳と年老いておりAは20歳と若いから、Bを投げ飛ばすのは相当でない。」

↑評価が突然とんでいる。若いから何なのかが分からない。

<良い例> 

「BはA殴り暴行を加えているためAの身体が害される危険性があった。他方,Aは80歳と年老いているBを投げ飛ばしており,かかる行為の態様が強度で,Aが20歳と若く、Bに比して力があると考えられることを踏まえると,Bが頭部等を打ち付ければ同人の生命を侵害する危険性がある行為である。したがって,Aの防衛行為の危険性は侵害行為の危険性を大きく上回っており,同行為は防衛行為として必要最小限度とはいえない。よって,相当性は認められず、「やむを得ずにした行為」とはいえない(結論)。」

AとBの年齢(具体的事実)→AはBより若い(評価)→AはBより体力や力がある(評価)→強いのに思いっきりやり返している(評価)→必要最小限度ではない(規範)→相当ではない(規範)→「やむを得ずにした行為」(要件)ではない

というように、具体的事実に評価を重ねることで、規範・要件というところまで抽象度を上げていくことが必要である。

第3 「刑法」の答案作成の作法

1 体系論への意識

刑法は体系論がしっかりしており、この体系に沿った検討が求められる。具体的には①構成要件(実行行為→結果→因果関係→構成要件的故意)→②違法性阻却事由の有無→③責任阻却事由の有無の順での検討が求められる。また、一般的に刑法の答案が他の科目に比べ書きやすいといわれるのは、体系が整理されているため、決まった順番で事案を検討・処理することができるからである。それゆえ、いかなる事案が出題されたとしても、この①~③の順で検討することを忘れないでほしい。

  

2 客観面から主観面へ

 刑法の事例問題を解く際には常に客観面の問題(実際に起きた事実の問題)と主観面の問題(行為者の頭の中での事実の問題)を区別する必要がある。例えば、実行行為や結果などが客観面であり、故意や不法領得の意思などが主観面である。答案の作成にあたっては客観面の検討→主観面の検討という順序を守ってほしい(例えば、故意の有無がメインの論点であっても、いきなりその論点に飛びつくのではなく、客観的構成要件(行為、結果、因果関係)についての言及を先にしてほしい)。また、一般的にこのようなプロセスでの検討を必ず伴うのが錯誤論であり、客観的に発生した事実と主観的に認識した事実に齟齬がある場合の処理が問題となっているため、この流れで問題提起をする必要がある。

3 設問に答える―「具体的な事実を摘示しつつ罪責を論じなさい」とは?

刑法の設問は基本的に毎回「罪責を論じなさい」といった形で出題される。「罪責」という言葉は、「罪」と「責」という言葉からできており、「罪」とは犯罪、「責」とは刑事責任を指す。また、「論じる」とは論理的に述べることをいうと考えられる。したがって、「罪責を論じなさい」とは、「どのような犯罪が成立し、どのような責任を負うのか(=刑罰の範囲としての罪数処理はどうなるのか)を論理的に述べなさい」ということである。よって、刑法の答案を作成するときには、罪数処理まで忘れないように心掛けたい(もっとも、配点はあまり大きくないと思われる)。

 なお,【H21出題趣旨】によれば,「具体的な事実を摘示しつつ」とは「単に,問題文に表れた事実を漫然と羅列するのではなく,いかなる事実がいかなる構成要件要素の該当性判断に関係があると考えているのか分かるように論述」することである。具体例として,以下のものが挙げられている。「例えば,問題文に記載された各事実関係のうち,どの事実が甲乙の『預金の占有』の有無を基礎付ける事実で,どの事実が甲乙の『(占有の)業務性』の有無を基礎付ける事実であると考えているのかが分かるように『事実を摘示しつつ』犯罪構成要件要素が充足されるか否かの結論を導くことが求められている。」

4 事実の摘示とメリハリへの意識 

刑法に限らず司法試験の論文式試験は事案の解決を求められている。そのため,問題文中の具体的事実はできる限り答案に引用すべきである(なお、必要に応じて要約等を行う必要がある)。事実が示されていないといくら評価しても何について評価しているのかが伝わらず、事案を規範にあてはめたことにならないため、注意してほしい。

また、刑法の試験は時間との闘いであるから、重要(中心的)な論点は厚く、その他はあっさり書くといったメリハリも意識するようにしてほしい。重要(中心的)かどうかはさしあたり問題文に書かれている事実の分量を目安に判断すればよい。

Ⅱ 勉強方法について

第1 基本的な勉強方法

まずは判例・通説について解説した基本書(基本刑法など)を一読してざっと知識をインプットし、そのあと問題演習をしながら基本書と行ったり来たりを繰り返すことで知識の定着を図り、判例や論点の理解を深めるという流れをたどるのがおすすめである。

私の場合は、基本刑法で総論・各論の知識をざっと確認し、刑法事例演習教材を2周ずつ(重要な問題については3~5週)解いた。その後、間違えた論点などについて、基本刑法に戻り、最終的に趣旨・規範ハンドブックに知識をまとめていた。

ここで気を付けてほしいのは、必ず演習中心の学習を行うことである。論点学習のみを行ってしまうと具体的事案を目の前にしたときに、事案から論点を抽出することができず、論点を落としてしまうおそれがあるからである。また、実際はその論点が問題となっていないにも関わらず、論証を貼り付けてしまうことを防ぐ意味合いもある。

さらに、刑法は答案を書いて他人に読んでもらって初めて成長する科目であるため、答案を書くことから逃げないでほしい。

第2 勉強上の注意点

1 採るべき見解

刑法は学説の対立が激しく、分野によっては見解が百花繚乱状態である。学問的には重要であるが、司法試験との関係では判例(判例がないところは通説)に従っていれば足りる。仮に、判例でなく自分の考えに近い見解を採用したい場合には、判例を示したうえで批判したうえで自己の見解を示すということを忘れないでほしい。

2 典型事例への意識

他の科目と同様に論点先行の学習はやめたほうがよい。刑法に限らず、事例問題を解く際には、事案から論点を抽出する作業が必要であるところ、論点先行で学習すると前述のようにこの作業がなかなかできない。そのため、論点学習の際には典型事例を頭に入れて置き、似た事案が出た場合には、その論点を疑うという形で勉強してほしい。この観点からも、簡潔な設例ベースで開設される基本刑法(後述)がおすすめである。

また、このような勉強を行うことで、あてはめにおいてメリハリをつけることができるようになる。換言すれば、典型事例の場合のあてはめは端的に、限界事例の場合は丁寧に論じる必要があるところ、このような勉強を続けていれば、その判断を行いやすくなるというメリットもある。

3 事実適示・評価へのこだわり

上述のように刑法の問題では、事実の分析を前提とした法適用が求められている。法適用においては、事実適示→評価の流れを忘れてはならず、できる限り多く(ただし、必要なものに限る)の事実を適示し、適切な評価を一言加える必要がある。この点は、自主ゼミ・予備校の添削を行ったりするなどして、事実適示能力・事実の評価の能力を磨いていってほしい。もっとも、事実の評価において他人が思いつかないような評価をしたりやゴリゴリと一つの事実を評価をするなど独自のこだわりを持ちすぎると、時間切れや答案全体のバランスを欠くなどの弊害が生じるため、気を付けてほしい。

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