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日本大ロー令和8年度(2期)入試答案例

2026年8月15日

参考答案

【憲法】

第1 設問1

1 たしかに、私人間における人権保障を徹底する立場から、憲法規範を私人間においても直接適用すべきという直接適用説も存在する。もっとも、憲法規範は、国または公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障する目的に出たもので、もっぱら国または公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人間の関係を直接規律することを予定するものではない。また、私人間に事実上の支配関係がある場合でも、事実上の支配関係については、国または公共団体と個人との関係に比して、判定が困難であるため、同様である。

以上より、直接適用説は、妥当でない。

2 そこで、私人間において人権侵害が存在する場合には、私的自治に対する一般的制限的である民法1条、90条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によって、憲法の趣旨を取り込んで対応する間接適用説が妥当である。

第2 設問2

1 Yが、その社員採用試験の際、Xに対し、大学在学中における学生運動参加の事実の有無について申告を求めることは、Xの思想良心の自由(憲法19条)を侵害する結果、採用拒否の意思表示は、公序良俗違反(民法90条)として無効とならないか。

2 思想良心の保障範囲について、人格形成活動に関連しないあらゆるものまで含めると、思想良心の価値がインフレ化してしまう。そこで、憲法19条によって保障される思想良心は限定的に解すべきであり、個人の人生観等の人格形成に必要な事項及びそれに関連する精神作用に限って、同条の保障対象となり、自らの思想良心を沈黙する自由も同条の保障の対象となる。

本件において、学生運動に参加することで、自らの政治的思想を育むこととなり、政治的思想は個人の人格形成に必要な事項であるから、それについて沈黙することも同条の保障対象となる。

3 XとYは、いずれも私人であるから、設問1で論じたとおり、憲法を直接適用することはなく、公序良俗違反を検討する際に、憲法の趣旨を取り込んで判断する。

Yは、商事会社であり、企業である以上、営業の自由(憲法22条1項)、財産権(憲法29条1項)を有している一方、Xは、上述のとおり、学生運動参加の有無について沈黙する自由を有していることから、その調整が必要となる。

たしかに、通常の商事会社において、特定の政治的思想、信条を有する者を雇用することが、その思想、信条を原因として業務に支障を生じさせることは想定できないから、採用に際し、応募者にその政治的思想、信条を申告させることは許されないという見解もあり得る。もっとも、上述のとおり、Yは企業であるから、営業の自由及び財産権を有しており、広く経済活動の自由が基本的人権として保障されているところ、自社の営業のために労働者を雇用するにあたり、いかなる者をいかなる条件で雇用するかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由に決定できるのであり、特定の思想、信条を有する者の雇用を拒んでも、それを当然に違法とすることはできない。そして、企業が特定の思想、信条を有する者の雇用を拒むことができる以上、採否の決定にあたり、労働者の思想、信条を調査し、そのためにその者からそれに関連する事項について申告を求めることも違法行為とはならない。

4 以上より、Yの行為は適法であるから、Xの主張は妥当でない。

【民法】

第1 設問1

1 小問(1)

(1) 令和7年6月1日、Aを売主、Bを買主として、絵画甲を代金100万円で売買する旨の契約を締結しており(555条)、代金の支払と絵画甲の引渡しは、同月30日にAの自宅で行うとの約定であったことから、Aは、同日、Aの自宅で絵画甲を引き渡す取立債務を負っていた。

もっとも、Bは、「代金を減額してもらえないのであれば、絵画甲を引き取ることはできない」と告げており、これは受領遅滞にあたるところ、「債権者があらかじめその受領を拒」んでいるといえる。そして、Aは、「引渡しの用意をして待っているから、取りに来てもらいたい」と告げており、「弁済の準備をしたことを通知してその受領を催告」している(493条ただし書き)。

(2) 以上より、Aの行為は、弁済の提供にあたるから、Bが、Aから絵画甲の引き取りを求められたのにこれを拒否したことにより、弁済の提供時から、債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れることとなる(492条)。

2 小問(2)

(1) 「債権者」Bが「債務の履行を受けることを拒」んでおり、絵画甲は、隣家で発生した火災がA宅に延焼し、絵画甲が焼失しており、「履行の提供があった時以後の当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったとき」といえるから、「履行の不能」は、「債権者」Bの「責めに帰すべき事由によるものとみなす」(413条の2第2項)。

そして、「債権者」Bの「責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは」、「債権者」Bは、「反対給付の履行を拒むことができない」(536条2項前段)。なお、同様の理由から、Bは、売買契約を解除して本件代金債権の支払を免れることもできない(543条)。

(2) 以上より、Aは、Bに対して、本件代金債権について支払を請求できる。

第2 設問2

1 小問(1)

(1) C及びDいずれも、本件代金債権について「譲渡人」であるAから「債務者」Bに通知がなされているから、債務者対抗要件を備えている(467条1項)。

もっとも、第三者対抗要件は、確定日付のある証書によってなす必要があるところ(同条2項)、Dへの譲渡は、口頭で通知されているに過ぎない一方、Cへの譲渡は、内容証明郵便によってなされているから、Cへの譲渡のみが第三者対抗要件を備えていることとなる。

(2) 以上より、Cが第三者対抗要件を備えたことで、Dは債権を喪失するから、Cが本件代金債権について支払を請求できる。

2 小問(2)

(1) 設問前段

ア Cへの譲渡については、日付は令和7年6月15日付けであり、到達は18日である一方、Dへの譲渡については、日付は同月16日付けであり、到達は17日であるところ、記載の日付あるいは到達の日時のいずれを基準として、CとDの優劣を判断するべきか。

イ 債権譲渡における対抗要件は、債務者の認識を通じて、債務者をインフォメーションセンターとして機能させることを根幹として、467条2項は、譲渡人と債務者の通謀による不正を可及的に防止することを目的としている。したがって、二重譲渡における譲受人間の優劣は、確定日付のある証書による通知が到達した日時あるいは確定日付のある証書によって債務者が発した承諾の到達の日時の先後を基準として判断するべきである。

ウ 本件では、Dへの譲渡に対する内容証明郵便の到達が先である。

エ 以上より、Dが第三者対抗要件を備えたことで、Cは債権を喪失するから、Dが本件代金債権について支払を請求できる。

(2) 設問後段

ア 内容証明郵便が同時到達した場合には、C、Dいずれが本件代金債権について支払を請求することができるのか。

イ 譲受人いずれも、債務者に対する関係においては、債務者対抗要件、第三者対抗要件のいずれをも備えており、自己に債権に帰属していることが確定していることから、債務者に対して譲り受けた債権の全額を請求することができる。

ウ 以上より、C、Dいずれも本件代金債権について支払を請求することができるが、BがCとDのいずれかに対する支払をすると、本件代金債権は消滅するから、他方は請求できないことになる。

  

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