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一橋大学法科大学院入試に向けた対策・入学後の過ごし方とは?

2025年8月11日

お知らせ

第1 一橋大学法科大学院 入試概要

1. 概要と選抜方式

一橋大学法科大学院(ロースクール)は、主に 一般選抜5年一貫型教育選抜 の2つの選抜方式があります。

一般選抜

法学未修者コース:大学で法学を専攻していない方対象、修了まで3年間。

法学既修者コース:法学を事前に学んでいる方対象で、基礎教育が免除され2年間で修了可能

5年一貫型教育選抜

一橋大学法学部法曹コース在籍者で、所定のプログラム(PACE I, PACE II 等)を修了した学生が対象。法科大学院に早期に進学できる制度です。

入試は複数段階で構成され、各選抜方式に応じて異なる科目・選考方法が定められています。

2. 選抜方式の詳細

一般選抜(既修/未修 共通)

選抜は3段階方式で行われます。

第1次選抜(書類選考および英語評価)

TOEIC または TOEFL iBT のスコアで、応募者数が定員の約5倍を超える場合に実施

過去の最終合格者の平均スコアは以下の通り:

2025年度:平均857.9、最高989、最低775

2024年度:平均879.7、最高980、最低760

ボーダーラインとしては最低でも750点前後必要とされ、非常にハイレベルな英語力が求められます

第2次選抜(書類+論文または小論文)

未修者:小論文試験(例:800~1000字)、および自己推薦書や成績・英語スコアを総合評価

既修者法学論文試験(対象科目:民法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法・憲法)。各科目で一定基準に達しないと総合評価とは関係なく不合格となる仕様です。

法学論文試験の試験時間

民事法(民法+民訴法):10:00~12:15(135分)

刑事法(刑法+刑訴法):13:30~15:45(135分)

憲法:16:30~18:00(90分) 。

出題傾向:判例(百選掲載や近年重要判例)を前提に、事案分析力・問題発見能力・論理的思考力・表現力などが問われます。事案の背景や周辺知識、判例だけでなく応用・展開も理解しておく必要があります。

行政法と商法が試験科目として課されていない点にも特徴があると言えます。

第3次選抜(面接)

面接試験の結果と第2次までの成績を総合して最終合格者を決定。面接では法律知識ではなく、法科大学院で学ぶ適性や法曹としての資質、志望動機などが見られます

5年一貫型教育選抜

募集定員:20名程度(参考として)

出願資格には法学部コース修了や英語・海外経験等の条件あり

選考方法の詳細(第何次選抜など)は公式募集要項によるため、出願時に必ず確認が必要です

3. 倍率・難易度・合格状況

全体の倍率(実質倍率):2024年度では実質約3.23倍、受験者313名に対し合格者97名

既修/未修ごとの倍率(2025年度)

既修者:45名定員、志願者215名、合格者55名 → 約3.91倍

未修者:20名定員、志願者71名、合格者19名 → 約3.74倍

比較的高難易度:中央大学法科大学院などと比べても一橋大学は難易度が高く、特にTOEICスコアの扱いや第2次選抜の法学論文が厳しく、バランスの良い学力と表現力が求められます

4. 学費・奨学金制度

学費(2025年度目安):

入学金:282,000円

授業料:年額804,000円

他の国立ロースクールと同一の学費です。

学費免除制度・奨学金

一橋大学法科大学院奨学金:支給型、月額50,000円、1年間、2名以内、学業優秀かつ経済的困窮者対象。

本田正士記念奨学金:支給型、月額50,000円、1年間、5名程度。

植松正記念奨学金:支給型、月額50,000円、1年間、5名程度、5年一貫型選抜入学生対象

学業成績が優秀な場合には一定の給付金制度が整備されています。いずれも選考には書類審査等があり、受給後には成果報告の義務が課されます。

5. スケジュール・過去問

出願~選考のスケジュール詳細は、公式の募集要項にて都度更新されますので、最新の情報確認が必要です (一橋法科大学院の募集要項はこちら)

過去問の公開:未修者・既修者それぞれについて、年度ごとの過去問が公式HPで閲覧できます(一橋大放火大院の過去問はこちら)

第2 一橋大学法科大学院(以下「一橋LS」)入試に向けた対策

1 一次審査(書類)

主に学部GPAと、TOEIC・TOEFLなどの英語のスコアで審査されます。ここ数年、TOEICスコアにして最低700以上が要求されており、英語が苦手と言う人にはかなり厳しい状況になっています。他方、(法科大学院として望ましいかはさておき、)一橋LS受験生の法律面のレベルは相対的に下がるような感じもあり、科目数が少ないこと、試験の時期がやや遅いことにも照らすと、英語が得意な方にはトライする価値があります。

2 二次試験(法律論文)

試験科目は、憲法・民事法(民法・民事訴訟法)・刑事法(刑法・刑事訴訟法)で、行政法と会社法は含まれません。全体の傾向としては、事案のあてはめよりも法律論の適切な理解(規範の暗記ではありません)が求められる傾向がありますが、オーソドックスなLS入試であり、スタンダードな入試対策がまずは重要です。独断と偏見による各科目の特徴を以下にまとめました。

⑴ 憲法は、そのままのモデル事例があるわけではなく、重要判例の趣旨を入れ込むポイントが散りばめられている問題が多いです。各判例の規範や処理をそのまま覚えるというよりは、各判例が結論を導く際に決め手となったポイントを分析しておき、どのような場面・条件下でその規範を使えるか、柔軟に検討できるようにしておきましょう。

⑵ 民法は、設例自体が短く、1つ1つの重要論点に的確に答えるのが重要です(家族法はあまり出題されません)。年によっては類推適用や類似の法理の援用が求められることもありますが、無理に手広く論点を抑えるよりも、重要論点を抑えつつ、重要な条文の趣旨や解釈にかかる判例を理解し、最低限の法律構成を組み立てることが大事です。

⑶ 民事訴訟法も設例自体は短く、重要・典型論点について、規範の趣旨や構造の正確な理解が問われる傾向にあります(市販品の中では、Law Practice民事訴訟法は相性が良いと言われています)。ただ、権威だった山本和彦教授が退官されたため、2026年度入試から傾向が変動する可能性はあります。

⑷ 刑法は、総論と各論から一問ずつ出題する、オーソドックスなスタイルです。出題内容も理解が難しいものではなく頻出論点からが多く、総論では共犯に関する出題がやや多い傾向にあります。設例をよく読み、基本的な論点を落とさずに事実を当てはめることが重要です。

⑸ 刑事訴訟法は、基本論点からの出題がメインですが、時折、「利益原則の趣旨」のような、総論的な問題が出題される場合があります。総論的な問題が出題されても、極端にずれていないことを書ければよく、まずは論点問題の方を最低限答えて点数を確保しましょう。

3 三次試験(面接)

面接では、専ら、詰め役と普通役の計2人の教授が面接官となります。法律知識や変化球ではなく、「法曹を目指したきっかけ」「理想とする法曹像」「一橋LSを志望する理由」など、法曹を目指すに当たっての心持ちが問われます。自分なりに、①どのような法曹になりたいか、②なぜ一橋LSを選ぶのか、③一橋LSで何をどのように学んでいきたいか、などを言語化しておくことが重要です。理路整然と言語化できているかは、第三者に確認してもらうのが一番良いでしょう。

そして、不意打ちで何を聞かれても話せるように、適当なことや嘘偽りではなく、素直な考えを敷衍しておくのがおすすめです。エントリーシートをふまえ、穴があればしっかりと突いてくるので、中途半端な考えで臨むと、年間10名前後いる不合格者に入ってしまいかねません。

第3 入学から司法試験までの過ごし方

一橋LSは、生徒数が少なく、教授から密度の高い指導を受けやすいという特徴があります。また、なにより学友との議論を通じて、自分が知らない知識を吸収できること、法律的な議論によって法的思考力を正しい方向に高められること、受験や就職についての情報収集が容易なこと、なにより仲間がいるというメンタル面の支えがあるということが法科大学院のメリットです。その点、一橋LSは少人数ゆえに学友同士の距離感が近く、これらを享受しやすいかと思います。

1 授業

(上位の法科大学院は大抵そうでしょうが)授業では学説対立にもかなり踏み込むため難易度はやや高く、司法試験や実務との関係で言えば、オーバースペックな部分も多いです。ただ私見ですが、「司法試験に不必要なことやっているな」と適当にこなしてスルーするよりも、出された課題を自分なりに考え、授業を踏まえて咀嚼し直し、本当に役に立ちそうな部分やエッセンスを能動的に判断して吸収することで、授業を有用なものにすることができます。

先生方はとても面倒見が良く、口頭でもメールでも、質問すると懇切丁寧に答えてくれますから、沢山質問し、議論するのが良いと思います。

2 研究棟(マーキュリータワー)での過ごし方

授業時間外に勉強する際は、研究室、自習スペース、資料室、自宅など、人それぞれの過ごし方があります。

自習室はオープンスペースですが、静かで治安は悪くありません。ただ環境で言えば、席数に限りはありますが、資料室の方が静かかつ資料もたくさんあるので、一人で集中したいときはお勧めです。

また、2つのクラスそれぞれに研究室が1つずつ割り当てられます。研究室の住人は次第に固定されてきますが、皆が良心的であれば、各々がリラックスして勉強でき、また相談(ないし雑談)相手がいるので、学習効果も享受でき、精神衛生的にも良いです。

3 自主ゼミ

一橋LSは自主ゼミの活動が活発で、大部分の学生がそれぞれに自主ゼミを組織しています。自主ゼミでは、特に、起案を指摘しあうことで疑問点を解決し、自分の課題点を見つけてもらえますし、過去問演習のペースメーカーにもなります。忌憚のない議論と安定感を維持するため、人間的な相性も重要ですし、「デキる」人と組むと学習効果が高くなります。

4 合格者ゼミ・アドバイザーゼミ

一橋LS公式の企画として、合格者ゼミは、合格者の3年生から1・2年生向けに、12~3月ころに開催されます。科目特化、未修向け、既習ハイレベル向けなど、様々なタイプのゼミがあります。また学習アドバイザーゼミは、比較的若手の弁護士の方が、司法試験の過去問の解説・添削をしてくれます。現地開催の場合、懇親会も開いてくれます。

こうしたゼミを担当してくれる人たちは大抵お節介焼きですので、かなり細かいところまで添削や指導をしてくれることが多いです。合格者の視点が直接ほしい方は、ぜひ受講しましょう。

第4 司法試験終了から卒業まで

一橋LSでの司法試験後の過ごし方は、カリキュラムも踏まえて大体3タイプに分かれます。

1 まず、憲法訴訟、家族法実務、AI法、刑事実務など様々な発展分野を扱う「発展ゼミ」や、自ら志願して、研究者からマンツーマンで指導を受けながらリサーチペーパーを執筆する「法学研究」などを受講する、自分の興味関心に注力するタイプがあります。

2 次に、「ビジネスローコース」という、企業法務を見据えた能力を鍛えるカリキュラムがあり、大手事務所や外資系事務所に入所する人は、これを選択する人が多いです。

3 その他、単位は最低限にして自分の時間を楽しみ、バイトに打ち込む人もいます(当然、前二者であっても両立はできます)。

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