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【2026年ロースクール入試】慶應大学 民法 参考答案

問題1

甲土地について

⑴  Xは、Yに対して、所有権に基づく妨害排除請求権として、所有権移転抹消登記手続請求を主張する。かかる請求は、認められるか。
   同請求の要件は、①Xが甲土地を所有(206条)していること、②Yが所有権移転登記を備えていることである。

⑵ア  Yは、贈与契約(549条)たる本件契約①により、甲土地の所有権を取得しているため、Xは、甲土地の所有権を有しないとも思える。そこで、Xは、本件契約①を錯誤により取り消すことができないか(95条1項)

   イ   Xは、Yが末永く、Xの死後もZの面倒を見てくれることを期待して甲土地を贈与した。しかし、Yは、Xに対して、悪態をつき、暴言を浴びせるようになり、さらに、同時期にXが入院した際に、Yは甲土地に鉄条網を張り巡らせ、弊建物に入れないようにし、Xに対する  罵詈雑言を書き殴った看板を甲土地条に立てるなどした。これらのことから、乙が、Xの息子であるZの面倒を見ることが期待できない。そのため、「表意者が法律行為の基礎とした事情について、その認識が事実に反する錯誤」があると言える(95条1項)。

ウ   Zの面倒を見ることが期待できるかどうかは、「重要」と言えるか。重要と言えるか否かは、一般人及び表意者が錯誤に陥っていなければそのような意思表示をしなかったと言えるか否かにより判断する。
   本件では、甲土地は、不動産であるため高額であったと言える。そのような、物を無償で贈与することの決定的理由は、Zの息子の面倒をYが見ることを期待したためである。一般人及び表意者は、息子との面倒を見ることが期待できなければ、甲土地という高額な不動産を無償で贈与することは考えられない。そのため、かかる事項は、「重要」と言える。

エ かかる動機をXが、Yに表示したと言えるか(95条2項)。表示したと言えるのは、契約内容になっている場合をいう。本件では、何も理由を言わずに、XがYに対して、不動産を贈与することは考えられない。そのため、YがZの面倒を見ることが期待されることを理由とするとの話をしたことが推認できる。そのため、契約内容となっていると言える。
  したがって、表示されていると言える。

オ  以上より、Xの錯誤取り消しの主張が認められ、遡及的に無効となる(121条)となるため、Xは、甲土地の所有権を取得している。

⑵   Yは、甲土地について、所有権移転登記が経由されている。

⑶   よって、Xの主張が認められる。

2  丙建物について

⑴  Xは、使用貸借契約の解除(598条2項)に基づく原状回復請求として、建物明渡請求を主張することができるか。

⑵   本件契約2の法的性質が、賃貸借契約(601条)であるか、使用貸借契約(593条)であるか定かでなく、同契約の法的性質が問題となる。
   賃貸借契約は、貸主が目的物の使用収益をさせる義務を負う一方で、借主が賃料を支払うこと本質とする。他方で、使用貸借契約は、貸主が使用収益させる義務を負う一方で、借主は、賃料を支払う義務を負わない。そこで、実質的に、目的物の使用収益に対して、賃料が支払ウ義務を借主が追っているか否かで判断する。
   本件では、丁建物相場賃料は月月20万円である。しかし、Yは、月3万円しか賃料を支払っていない。また、かかる3万円は、光熱費・固定資産税に相当する金額であり、Yは、丁建物の使用収益に対して賃料を支払っているとは言えない。
   したがって、本件契約2の法的性質は、使用貸借契約と言える。

⑶   XとYは、使用期間、目的を定めていない。そのため、Xの解除が認められるとも思える。もっとも、使用貸借契約も信頼関係を基礎とする継続的契約関係であることから、信頼関係が破壊されていないと言える特段の事由があれば、解除は制限され、認められない。
   本件では、上記「第1」「1」「⑵」「イ」のとおり、Yは、Xに対して、罵詈雑言や嫌がらせを行っており、信頼関係は破壊されている。
   したがって、解除は制限されない。

第2  問題2

1  設問1について

  ⑴   Aは、Bに対して、債務不履行に基づく損害賠償請求(415条1項)を主張する。同請求の要件は、①債務不履行又は履行不能(412条の2第1項)の存在、②損害、③①と②との因果関係(416条)である。

⑵ア  本件売買契約(555条)の内容として、Bは、αの引渡しまでの間、Bがαを利用せずに、東京都S区の自宅倉庫で厳重に保管することが合意されていた。
  しかし、αは、Dにαを貸与し、その結果、αは盗まれている。また、返還される可能性もないため、Bは、Aにαを引き渡すことが社会通念上不可能である。したがって、履行不能と言える。

イ   Aは、αの引渡しを受けることができず、Cとの1300万円の転売契約の履行ができず、1300万円を受け取れないという損害を受けている。

ウ   もっとも、本件売買契約により、αは900万円で売却されているため、相当因果関係は、900万円の範囲でしか認められないのではないか。本件は、Bは、クラシックカーの専門家であり、αと同じ車種、年式・メーカーのクラシックカーが注目を浴び始め、市場価値が徐々に高騰し始めていることを認識していた。また、Bは、AがCと本件転売雨契約を締結したことも知っている。そのような中で、αが破損や盗取されれば、Aが1300万円の損害を受けるという特別損害を認識していたと言える。
   他方で、確かに、6月15日時点では、1250万円であったが、AC間の転売契約について内容を知っていることから、1300万円の損害については、予測可能性があった。

エ   また、車が盗まれたことについて、厳重保管をせずにDに貸したBに帰責事由がある。そのため、免責事由も認めえられない。

⑶   よって、上記要件を充足し、免責事由も認められないため、Aの1300万円の損害賠償請求は、認められる。

2  設問2について

⑴   αがBの元に戻ってきた場合に、履行不能と言えるか。

⑵   本件では、Bは、Aにαを引き渡せるため、履行不能といえない。その  ため、Bは、412条の2第1項を理由として、履行の請求を拒めない。したがって、②は、認めえられる。

⑶   他方で、Bは、代金が支払われた、4月25日から1ヶ月以内に引き渡していない。そのため、債務不履行は認められる。しかし、Aは、Cに、αを引き渡すことが可能であるため、損害との因果関係は認められない。
   したがって。①は認められない。

    

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