【司法試験・予備試験対応】法律答案の書き方〜入門編〜 事案分析から論証展開まで完全攻略
2025年7月10日
お知らせ
司法試験や予備試験では、知識のインプットだけでなく、それを答案という形でアウトプットする力が問われます。法律の条文や判例を理解しているだけでは、合格に届かないというのが現実です。
特に重要なのは、「事案をどう分析し、論理的に構成して、答案として表現するか」という実践的スキルです。本記事では、法的な思考に基づいた答案作成の基本プロセスから、読みやすく説得力のある文章の書き方までをわかりやすく解説します。
これから法律答案を書けるようになりたい方、あるいは伸び悩んでいる受験生の方に向けて、実践的かつ再現性のあるノウハウをお届けします。
法律答案作成の3ステップ:思考から記述へ
STEP1:事案の読み解き方|情報を構造的に整理する
● まずは時系列を把握する
法律問題では、出来事の前後関係が結論に直結します。特に民事系では、法律行為がどのタイミングで行われたかにより、法律効果がまったく異なることも多いです。
→ 具体的には、「時効完成後の第三者」と「時効完成前の第三者」等、第三者の対抗に際して登記の要否が変わってくることがあり、時系列の把握は極めて重要となります。
● 関係図を書くクセをつける
当事者が複数登場する事案では、登場人物間の関係性を図式化することが効果的。たとえば、
1. 「A→B」はAがBに対して債権を持つ関係
2. 「A⇒B」はAがBに何らかの法律行為をした(上に「S」と書けば「売買」)
このように視覚的に事実関係を整理することで、答案作成時にも自然な文構造に繋げることができます。事実関係を思い浮かべながら答案を書くことで問題文を読み返す必要がなくなりタイムロスを防止できるという利点もあります。
STEP2:答案構成で方向性を定める|設計図なしで家は建たない
● なぜ構成が必要か?
答案構成とは、論点や結論に至る道筋をあらかじめ設計する作業です。これを飛ばして書き始めると、論理が混線したり、要件が抜け落ちたりする危険があります。
司法試験の場合には答案構成用紙が配布されるため、答案構成用紙上に答案構成を記すと良いでしょう。予備試験の場合には答案構成用紙が配布されないため問題用紙の余白に答案構成を行うことになります。
● 構成を行う3つの利点
1. 論理の一貫性が保てる
→考えながら書くと主張がブレがちですが、事前に答案構成をしていれば方針がブレず論理的一貫性を保持しながら論じることが可能です。
2. 採点者にとって読みやすい答案になる
→整理された答案は読みやすく採点者に伝わりやすい答案となります。採点者も人間である以上読みづらい答案よりも論理的に整合性があり筋の通った答案の方が高い評価を得られやすい傾向にあると考えられます。
3. 時間の節約につながる
→書き直しや迷いが減るため、タイムロスが減ります。最も採点者の印象を悪くする行為の一つとして途中答案がありますが、答案構成を丁寧にすることにより途中答案となるリスクを軽減させることが可能です。
● 構成時に用いる基本的思考フレーム
法的問題を処理する際の思考順序は以下の通りです。
1. 問題に対応する条文を特定
2. 条文の要件の個数・意義を整理
3. 事実を要件ごとに一つずつ当てはめる
4. 全ての要件を満たせば法律効果が発生(結論)
この流れをそのまま答案の構成に落とし込めば、筋の通った答案になります。
STEP3:構成に沿って答案を書く|地図を見ながらゴールを目指す
論理構成が固まったら、あとはそれを文章として表現する段階です。最初は時間がかかっても構いません。丁寧に書く練習を積み重ねていけば徐々に答案作成時間は短縮できます。
とにかく演習を積み重ねてあなたなりの感覚を掴んでください。
法律答案の形式・構造:型を守って伝える技術
● ナンバリングは読者への配慮
段階的な記述には以下のようなナンバリングが効果的です:
第1→1→(1)→ア→(ア)→a→(a)といった多層構造
一目で構成がわかる答案は、採点者に安心感を与えます。
● 法的三段論法のパターンを押さえる
▷法的三段論法
要件AとはBをいう(規範) → 本件事実からすればBと言える →よって、本件事実は要件Aに当たる。
解釈論や論点処理に最も多用されます。司法試験の多くの設問がこのパターンを要求しています。
答案のレベルが向上してくれば、問題とならない要件に関してあえて法的三段論法を崩して論じることも必要になってきます。しかし、答案の書き始めはまずはバカ正直に法的三段論法をとにかく遵守することを強く意識してください。基礎が疎かのままの状態で応用にチャレンジしても上手くいきません。
まずは土台を作り上げた上で、徐々に応用力を身に付けていきましょう。
説得力ある法律文章を書くための3つの鉄則
1. 接続詞で展開を示す
「確かに」「もっとも」「しかし」「よって」「したがって」などを適切に使うことで、読者の思考を導くことができます。
自分の取りたい結論とは反対の立場を先に論じた上で、「もっとも」、「しかし(ながら)」等の逆説の接続詞で文章を繋げると説得力のある文章となります。
2. 長文は避けて簡潔に
法律文章は誤読を避けるためにも、なるべく短く、明快に論じることが重要です(過去の司法試験の採点実感でも同趣旨のことが指摘されています)。
そのため、「〜であり(事実1)、〜であり(事実2)、〜であり(事実3)、〜のため(評価)〜である(結論)。」のような1つの文章中に複数の事実が混在するような単調な文章は避けるべきでしょう。
特に初学者は「1事実につき1文」とすることを強く意識しましょう。自分にとって読みやすい文章ではなく採点者にとって読みやすい文章を書くように心がけることがポイントとなります。
3. 事実の記述は「誰が・誰に・いつ・どこで・何をした」順で
受験生は問題文中の事実が頭に浮かんだ状態で答案を作成するため問題文中の事実を省略して文章を書きがちですが問題文の事実を知らない第三者が読んでも何を書いているか分かるように伝える意識を持ちましょう。
たとえば:
「Xは本件土地を売却した。」
ではXが「いつ」土地を売却したのか、「誰に」売却したのかが不明確となっているため、下記のように
「Xは、令和6年6月1日、Yに対して、本件土地を売却した。」
と文章を書くことがポイントになります。
このような記述を徹底することで、採点者に具体的かつ正確なイメージを伝えることができます。
最後に|法律答案の型を身につければ点は伸びる
法的知識が十分にあっても、それを「答案」という形で伝えられなければ評価されません。
逆に、知識が完璧でなくても、「論点の発見→構成→論理的展開」のスキルがある受験生は、安定して得点を重ねることができます。
答案構成を中心としたこの思考プロセスを習慣化すれば、あなたの答案は必ずレベルアップします。司法試験・予備試験に向けて、ぜひ本記事の内容を実践に活かしてみてください。