平成23年予備試験 刑事訴訟法 参考答案
2026年7月5日
参考答案
平成23年予備試験 刑事訴訟法 参考答案
第1 設問1
1 下線部①の捜索差押許可状には、罪名として「覚せい剤取締法違反」、差し押さえるべき物として「金銭出納簿、預金通帳、日記、手帳、メモその他本件に関係ありと思料される一切の文書及び物件」と記載されている。このような記載が、令状の特定を要求する憲法35条および刑訴法219条1項に反しないか。
2 「覚せい剤取締法違反」との記載について
令状に捜索・差押えの対象を特定させる趣旨は、捜査機関による恣意的な権限行使を防止するとともに、憲法35条にいう正当な理由に基づいて令状が発付されていることを明らかにして被処分者に執行範囲を明らかにする点にある。したがって、令状が正当な理由に基づいて発せされたことを明らかにするためには、ある特別法犯の嫌疑が存在するということを 本件では、「覚せい剤取締法違反」と記載されているため、罰条が記載されていなくとも適法である。
3 「その他本件に関係ありと思料される一切の文書及び物件」との記載について
(1) 令状に捜索・差押えの対象を特定させる趣旨は、捜査機関による恣意的な権限行使を防止するとともに、憲法35条にいう正当な理由に基づいて令状が発付されていることを明らかにして被処分者に執行範囲を明らかにする点にある。したがって、概括的記載は、差押対象が不明確となり、令状主義の趣旨を害するおそれがあるため、原則として望ましくない。
もっとも、捜査段階では証拠物の具体的内容が判明していない場合も少なくない。そこで、具体的な物件が例示された上で、その例示との関係から差押対象が客観的に限定され、かつ被疑事実との関連性も明らかな場合には、令状の特定性は失われないと解する。
(2) 本件では、「金銭出納簿」「預金通帳」「日記」「手帳」「メモ」といった具体的な文書が列挙された後、「その他本件に関係ありと思料される一切の文書及び物件」と記載されている。そのため、差押対象は例示物件と同種の文書・物件に客観的に限定されているということができる。
したがって、本件概括的記載は令状の特定性を欠くものではない。
4 以上より、本件捜索差押許可状の罪名及び差し押さえるべき物の記載はいずれも適法である。
第2 設問2
1 本件メモを差し押さえることができるか。
2 差押えが適法となるためには、①差押目的物が令状記載の差押対象に含まれること、②刑訴法99条1項(222条1項)にいう「証拠物」に当たること(関連性)が必要である。関連性は、犯罪事実を直接立証する直接証拠に限られず、犯罪事実を推認させる間接証拠にも認められる。
3 本件で発見された物はメモであり、本件令状には差押対象として「メモ」が明示されている(①)。
4 では関連性を満たすか。
本件被疑事実は、甲が平成23年7月1日に乙へ覚せい剤10グラムを30万円で譲渡したという事実である。これに対し、本件メモには「6/30 250万円 丙から覚せい剤100グラム購入」と記載されている。本件メモのかかる記載は本件譲渡行為そのものを直接証明するものではない。また、自己使用のために覚醒剤を購入したことを推認するにとどまる可能性もある。
しかし、覚醒剤は1グラム単位で取引されるものであり、自己使用のためであれば1〜数グラムの購入をすることが通常である。そうだとすれば、100グラムは覚醒剤の自己使用のために購入する量としてはあまりに多すぎる。
加えて、本件メモの記載からは覚醒剤は10グラムあたり25万円であると推認できるところ、甲が乙に対して覚醒剤を10グラムあたり30万円で譲渡して5万円の利益を得ていたと考えるのが合理的である。これらのことから、甲が覚醒剤取引を行なっていたことが推認できる。
したがって、本件メモは本件被疑事実を推認させる有力な間接証拠であり、被疑事実との関連性を有する(②)。
5 以上より、本件メモは令状記載の差押対象に含まれ、かつ被疑事実との関連性を有する証拠物であるから、これを差し押さえることができる。
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