平成23年予備試験 憲法 参考答案
2026年6月13日
参考答案
<平成23年予備試験 憲法 参考答案>
第1 設問1
1 小問(1)
(1) 訴訟選択
A大学法科大学院で勉強したいBとしては,本件不合格処分の取消訴訟(行政事件訴訟法3条2項。以下「行訴法」という。)を提起し,併せて入学処分の義務付け訴訟(行訴法3条6項2号)を提起する。
(2) 憲法上の主張
ア Bとしては,A法科大学院では,181位以下の受験生について女性のみを合格させるという制度(以下「本件制度」という。)を採っており,これは性別を理由とした差別であり,憲法14条1項に反し違憲であると主張する。
イ (ア) 憲法14条1項は,原則として形式的平等を保障しているが,本件措置のような実質的平等の要請を否定するものではない。もっとも,実質的平等の追求により「逆差別」となるような場合には,かえって平等原則違反となりうる。
そして,憲法14条1項にいう「平等」は,相対的平等を意味する。よって,逆差別を正当化するような合理的理由があれば別だが,それがない限り違憲となる。
(イ) 本件差別は,歴史的にみて差別の対象となりやすかったものを列挙した憲法14条1項後段列挙事由の「性別」に基づくものであるから,疑わしい差別に当たる。また,司法試験の受験資格に関連する法科大学院に入学しうる地位に関する差別であり,法曹という公的意義を強く帯びる職業の選択(憲法22条1項)にかかわる重要な地位が問題となっている。
(ウ) 以上からすれば,区別の合理性の判断に当たっては,厳格な合理性の基準,具体的には,目的が重要で,本件制度が当該目的を達成するのに実質的関連性を有するものでなければ違憲となるというべきである。
ウ (ア) まず,本件制度の目的は,法曹人口における女性の増加であるところ,参考資料によると,昭和60年から平成16年に至るまでその割合は増加の一途をたどっている。
また,従来女性の割合が低かったのは,男性よりも女性が法曹を志望しない点に起因していたと考えられるところ,現在は,A大学法科大学院だけみても約33パーセント(受験生割合男女2:1)と増えてきているのであり,自然と女性の増加は達成できる。
以上からすると,当該制度目的を促進すべき事実が存在しないため,重要な目的ということはできない。
(イ) 手段として,本件制度では形式的に20名女性を優先するため,当該枠によって合格になった女性が著しく成績が低い場合も想定される。法曹になるには司法試験の合格が必要であることからすれば,目的達成の実効性を欠き,実質的関連性がないといえる。
また,本件制度のような手段を採らずとも,女性であればある程度加点する,同一の点数であった場合には女性から優先的に合格させるなど,男性受験者にも配慮した方策や,試験成績だけでなく志望理由書などの記載・提出を求め,熱意の有無などの個別審査の方法において女性であることを一つの要素とするなど,他により穏当な方法も考えられるところであり,これでも十分目的は達成できる。
したがって,本件手段は目的達成との関係で過剰な手段であるといえる。
エ 以上より,本件措置は合理的理由なく違憲である。
オ 本件措置が違憲であるとされた場合,定員200人のところ成績順位181位であったBは合格処分を得られ,A大学法科大学院に入学することができる。
2 小問(2)
A法科大学院側からは①本件制度はいわゆるアファーマティブ・アクションに当たるものであり,合理的理由の有無は緩やかに判断されるべきである,②入学制度構築には大学の自治(憲法23条)から裁量があるとの反論が想定される。
第2 設問2
1 反論①について
アファーマティブ・アクションとの反論も想定されるが、法曹界においては男性と女性との間に差別がなされてきたというわけではなく,単に目指さないことにあったと考えられる。また,実質的平等を追求した結果,原則といえる形式的平等を侵害し,「逆差別」となりうることを考えると,安易に「良性の差別」などとして審査を緩めるべきではない。
2 反論②について
入学制度構築について,どのような入学者選抜を行うかは,教員の人事や施設の管理などと並んで,当該大学院に認められた大学の自治の保障の範囲内であり,裁量が働くといえる。
もっとも、国籍法判決は、(a)差別の基礎が重要な法的地位に基づいている、(b)自己の努力ではいかんともし難い事項による差別である場合には厳格に審査すべきとしている。
本件では、性別を理由とした差別により、「法科大学院に入学して法学を学ぶという地位」を得られるか否かが関わっている。これは学問の自由に関わる差別であり、憲法上保障された精神的自由という重要な法的地位を差別の基礎としている(a)。これに加えて,性別は基本的には自己の努力で変えることができない事項である(b)。
以上からすれば、差別の基礎が重要な法的地位かつ自己の努力ではいかんともし難い事項によるため、大学院側の裁量は狭いというべきであり、本件差別に合理的理由があるか否かは,目的が重要か,手段が実質的関連性を有するか否かによって判断すべきである。
3 (1) まず,本件目的について,例えば,女性の悩みなどは女性法曹であるからこそ解決できるものということができる。法的トラブルは男女関係なく発生し得るものであり,法曹の多様性を増やして様々なニーズに対応する必要があるといえる。確かに,徐々に増えては来ているものの,法曹に占める女性の比率は未だ12~13%程度にとどまっており,今まさに存在する上記ニーズに対応するためには自然増を待ってはいられず,女性優遇をする必要性が認められる。よって,目的は重要である。
(2) 確かに、女性の入学者を増加させれば、女性の受験者という母数が増加することになり、将来的には女性の法曹が増加する可能性はある。
しかし、女性の入学者だけを増やしても司法試験合格につながるわけではなく,女性法曹増加に直ちに繋がるとは言えず、関連性は抽象的なものである。また、上記したとおり、女性を優遇した結果、本来合格できるはずの男性が不合格となっており、むしろ男性の教育を受ける権利を侵害する可能性すらあることからすれば、必要性を欠く。女性法曹を増加させるのであれば、法科大学院入学後の教育・就職サポートを手厚くするなどの措置を講じするべきであり、男性を差別するという不当な手段を講じるのは相当性を欠く。
以上からすれば、実質的関連性を有しない。
(3) 以上より,本件措置は違憲である。
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