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【2026年ロースクール入試】中央大学 民事訴訟法 参考答案

2025年9月3日

法科大学院, 勉強法

第1 設問(1)

1 本件「本訴」は、債務不履行に基づく損害賠償請求(民法415条)である。本問では、通常共同訴訟(民事訴訟法(以下法令名略)38条)と固有必要的共同訴訟(40条)の違いが問題となる。

2 共同訴訟の必要を判断する基準は以下の通りである。すなわち、訴訟で敗訴すると結果的に権利を処分したのと同様な結果になるから、訴訟追行は実体法的な処分の延長線上に位置付けることができる。そうだとすると、訴訟物である実体法上の権利関係にかかる管理処分権を有している者について当事者適格を認め、その者に対して本案判決をすれば、その訴訟物についての紛争は有効、適切に解決できる。この管理処分権が実体法上共同行使されるべきものであれば、関係人全員が揃わないと当事者適格が認められないから、訴訟共同の必要がある。反対に、実体法上管理処分権を共同行使すべき性質がないときは訴訟共同の必要は認められない。

3 本件における「本訴」は民法上の組合(民法667条1項)であるC企業体の財産権に関する訴えである。組合財産は組合員全員の共有に属する(民法668条)ところ、ここにいう共有とは合有状態をいうと解する。そうだとすれば、組合財産の管理処分権は、組合員個人ではなく、組合全員に帰属し、「本訴」の既判力は組合員全員に及ぶ。すると、組合員全員に当事者として当事者適格を認め、訴訟関与の機会を与えるべきであり、合一確定の要請は強い。

4 以上より、「本訴」は固有必要的共同訴訟となる。

第2 設問(2)

1 本訴が適法と言えるためには、Aが選定当事者(30条)に該当することが必要となる。では、Aは選定当事者(30条)に該当するか。

(1)30条1項は、「前条の規定に該当しないもの」と定める。すると、C企業体は29条の「社団」に該当し、30条1項の適用は受けないとも思える。しかし、任意的訴訟担当の許容性が相当程度認められている今日においては、このような制限に合理性は乏しいから、C企業体が、29条の「社団」に該当することのみを理由に30条1項の適用は否定されない。

(2)では、「共同の利益」(30条1項)を有する多数者に当たるか。

ア 「共同の利益」とは、38条の共同訴訟の要件を相互に満たす者であって、主    要な攻撃防御の方法を共通にするものであれば足り、必要的共同訴訟の要件や、38条前段の要件を満たす必要はない。

イ 本問では、AがC企業体の他の組合員から選定を受けているところ、Aと他    の組合員は上述のとおり共同訴訟の要件を満たし、攻撃防御方法も共通する。

ウ よって、「共同の利益」を有すると言える。

(3)以上より、Aは選定当事者に該当する。

2 よって、本訴は適法である。

第3 設問(3)

1 Aが組合員それぞれの選定を得ることなく、本訴を提起した場合、その訴えが適法といえるためには、Aが明文なき任意的訴訟担当として原告適格を有するといえる必要がある。

(1)そもそも、弁護士代理の原則(54条1項本文)や訴訟信託の禁止(信託法10        条)の趣旨は、非弁活動により当事者の利益が害されることを防止し、もって司法制度の健全な運営を図る点にある。そうだとすれば、弁護士代理の原則や訴訟信託禁止の趣旨に反しない場合には、これを認めても不都合はない。そこで、明文なき任意的訴訟担当も、訴訟追行権の授与があることを前提として、①弁護士代理の原則や訴訟信託の禁止の趣旨を回避、潜脱するおそれがなく、かつ②これを認める合理的必要がある場合には、許容されると解する。

(2)本問では、組合規約に訴訟追行権の授権について明示されていない。しかし、C企業体の組合規約では、業務執行組合員に自己の名で組合財産を管理し、対外的業務を執行する権限が与えられているところ、業務執行組合員には強力な権限が付与されているから、訴訟追行権もまた授権されていたと解することができる。そして、Aは弁護士代理の原則や訴訟信託の禁止の趣旨を回避潜脱するおそれはなく、かつ、合理的必要を否定する事実もない。

(3)よって、Aに原告適格は認められる。

2 以上より、「本訴」の提起は適法である。

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