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【2026年ロールクール入試】中央大学 商法 参考答案

2025年9月5日

法科大学院, 勉強法

第1 小問(1)

1 Pは本件決議の効力を争うため、株主総会決議取消の訴え(会社法(以下法令名略)831条)を提起することが考えられる。

2 訴訟要件について

 まず、Pは甲社の発行済株式総数の3%を有する「株主」である。そして、令和7年8月15日は、本件決議が行われた令和7年6月20日から数えて「3ヶ月以内」である。よって、訴訟要件は満たされる。

3 本案について

Pからの質問を議長のAが理由を示すことなく一切の回答を拒んだことが、314条に違反し、決議方法の法令違反(831条1項1号)とならないか。

314条は会社法施行規則71条に定める「正当な理由」がある場合には、説明を拒むことができる旨規定する。もっとも、本件では、同条各号に当たる事由はない。よって、Pからの質問に全く回答しなかったAの態度は314条に違反するものである。

4 裁量棄却について

 取締役による説明は、適切な議決権行使の前提となるものであり、説明義務違反は「重大」な違反であるから、裁量棄却(831条2項)は認められない。

5 以上より、Pの上記法的手段は認められる。

第2 小問(2)

1 甲社は、本件決議が効力を持たないところ、Dは取締役としての地位を有さず、代表取締役(349条)としての地位を保ち得ないから、Dの行為は無権代理であり、甲社に本件売買契約の効力は帰属しない(民法113条1項)と主張することが考えられる。

2 これに対し乙社は、Dが表見代表取締役(354条)にあたり、本件売買契約の効力が甲社に帰属する旨反論すると考えられる。かかる反論は認められるか。

(1)ここで、本件決議が無効であるならば、Dは「取締役」としての地位を有しない。そうすると、Dは「代表取締役以外の取締役」に当たらないから、354条は適用されないとも思える。もっとも、同条の趣旨は名称に対する第三者の信頼を保護することにあるところ、「社長」等の名称を付された使用人も代表取締役らしい外観を呈することになる。そこで、使用人にも、同条が類推適用されると解する。

(2)甲社はDを代表取締役として選任していることから「名称を付した」と言える。  

(3)ここで、代表取締役の氏名は登記事項(911条3項14号)であるから、908条前段により乙社の悪意が推定されるとも思える。もっとも、商取引の大量性・反復性からすれば、取引ごとの調査・確認を要求すべきではないから、当該取締役の代表権の存在を疑うに足りる重大な理由がなければ、登記簿の閲覧や会社への照会などにより調査・確認する義務は負わないと解するべきである。そして、本件では、重大な理由はない。よって、悪意は推定されない。

(4)「善意」(354条)とは、善意無重過失をいうところ、本件では、乙社に重過失は認められないから、「善意」といえる。

(5)よって、乙社の上記反論は認められる。

3 以上より、甲社は乙社の請求を拒むことはできない。

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