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中央大学法科大学院(中大ロースクール)受かり方・過ごし方とは?

2025年10月2日

法科大学院

第1 中央ロー入試まで

1.はじめに

私が法曹を目指し、ロースクール進学を決めたのは大学3年の秋学期でした。そのため、学部時代の授業がロースクール入試に役立ったということはなく、専ら予備校のテキストを活用してロースクール入試に臨みました。科目数は少ない方が良いものの、選択肢(受験できる学校)が限られてしまうのは好ましくないと考え、多くのロースクール入試で出題される行政法以外の6法を勉強することにしました。
そこで、法律知識がほとんどなかった私が、予備校のテキストを活用し、半年ほどの勉強で中央ローに学費免除で合格した学習方法をお伝えしたいと思います。

2.学習初期段階(0~3か月)

予備校のテキストを活用して6法の勉強をするにあたり、私が大切にしていたのは「分からないなら割り切って進む」という姿勢です。時間的制約がある中で6法すべてを完璧に理解することは不可能であると認め、できるだけ早く知識を一通り学習することを重視しました。
もっとも、学習初期段階で軽視してはならないのが「原理・原則・趣旨・規範」を暗記し、自分の言葉で表現できるようにすることです。暗記は、時間をかけることで単なる記憶の定着にとどまらず、そのテーマに関する理解を深める効果があります。実際、私は初期段階から暗記を大切にしていたため、ロースクール入試時には予備校が用意した論証をほぼすべて暗記し、理解することができました。さらに、後述のとおりロースクール入試の学習レベルは司法試験や予備試験と比べて高くはありません。そのため、一つの論点が出題された際に、正確かつ適切な論証パターンを提示できることは大きなアドバンテージとなります。
以上から、学習初期段階において「原理・原則・趣旨・規範」を暗記することは、中央ロー入試対策として非常に有効であるといえます。

3.学習中期段階(4か月~6か月)

学習初期に6法の基礎知識を一定程度身につけた後の学習中期では、予備校の問題集を繰り返し演習しました。具体的には、最初の3回(1日1法ずつとして20日程度)は問題文・解説・解答例を読み、初期段階で学んだ知識が問題文になるとどのように問われ、どのように解答すべきかを確認しました。その後は出題・解答パターンを把握したうえで、できる限り解答例に沿うように自分の言葉で答案を書く練習を重ねました。
この段階で最も重視したのは、論点を抽出し、暗記した論証パターンを正確に展開することです。法律学習においては「論点主義的・暗記主義的ではいけない」とよく言われますが、論点の抽出や論証の展開ができなければ、問題には太刀打ちできません。論理展開やあてはめの丁寧さは、繰り返しの演習によって自然と向上する部分もあり、さらに生来のセンスに左右される部分も大きいと思います。
したがって、学習中期では論点抽出と論証パターンの展開に専念し、演習を積み重ねました。

4.学習後期段階(6か月~)

ある程度論点を抽出でき、多くの問題で「問題の所在」をつかめるようになった学習後期では、時間内に答案を書く訓練に集中しました。ネット上にある過去問や予備校の模試を使い、繰り返し起案しました。起案後は簡単に出題趣旨や解説を確認し、また新しい問題に取り組む、という流れを徹底しました。
当時の私は一人で勉強していたため、フィードバックを受けることはできませんでした。そのため、大切にしたのは「大きく外れていなければ良し。」と割り切ることでした。知識が不十分な状態で悩み続けるより、新しい問題を起案して経験を積む方が有益だと考えていたからです。今振り返っても、この姿勢が合格に結びついた最大の要因であったと感じています。もっとも、他者からフィードバックを得られる環境があるなら、それを活用するのが最善であることは間違いありません。

5.受験を終えて感じたこと

結論から言えば、目標であった中央ローに合格し、学費免除も受けられたので、学習方法には概ね満足しています。
ただ、中央ローに入学し、司法試験を経験した今の立場から過去の自分にアドバイスするとすれば、「答案を採点するのは人間である以上、きれいな答案を意識しなさい」という点です。ここでいう「きれいな答案」とは、①読みやすい字、②正確で自然な日本語・表現、③整理された論理展開、の3つです。③は別としても、①②は意識すれば短期間で改善可能です。
もっとも、答案の見やすさは暗記や起案に比べれば価値は低いものです。したがって、まずは1~4で述べた学習方法を徹底し、そのうえでプラスアルファとして「きれいな答案」を意識すれば十分でしょう。

第2 中央ロー入学後の過ごし方

1.はじめに

中央ローは留年率が高いといわれています。そのため、私は入学当初「留年しないこと」だけを考えていました。もっとも、留年を避けるための努力(ロースクールにコミットする努力)と、司法試験に向けて学力を高める努力(司法試験にコミットする努力)は概ね一致しています。したがって、「ロースクールの授業は意味がない。予備校だけ信じればいい。」と考えず、最大限ロースクールの環境を活用することを強く勧めます。

2.科目別勉強方法

・憲法

授業の受け方について
基本的な判例をベースに、双方向形式で基本的人権に関する理解を深める授業が行われます。授業内では、教授から参考判例の重要部分や、類似判例との相違点、それによる評価の違いについて問われることが多くあります。
参考判例の内容を全く知らない場合は難しいですが、授業は双方向形式であるとはいえ、ある程度は講義的に新しい考え方や知識を吸収する場でもあります。したがって、授業前の予習に過度な時間をかけるのは非効率で、むしろ復習に力を注ぐことが有効です。授業で学んだ新しい知識や忘れていた知識を定着させることを重視すると良いでしょう。

試験について
授業で扱うのは基本判例に関する理解を深める内容ですが、期末試験の難易度は比較的高めです。もっとも、試験は相対評価で行われ、憲法以外にも勉強すべき科目は多数あります。そのため、期末試験対策としては、授業で扱った基本判例の射程を意識し、別の事案にあてはめた場合にどのような評価があり得るかを考える訓練にとどめるのが適切です。それ以上に、多数の判例に手を広げる必要はありません。
加えて、憲法試験では「事実関係を憲法的観点から評価し、合憲か違憲かを論じる力」が求められるため、作文力や文章の説得力が成績に大きく影響します。したがって、憲法は試験勉強の優先度としては他科目より低めと考えるのが現実的でしょう。


・行政法

授業の受け方について
既習コースでは、前期に行政法の全分野を講義形式で学び、後期にテーマごとに双方向形式で授業が行われます。前期は予習不要です。後期についても、各テーマの事例問題は難易度が高いため、予習は問題文を読み少し考える程度で十分です。むしろ、授業と復習を通じて知識を定着させることを重視し、予習に時間を取られすぎないようにしましょう。

試験について
前期の期末試験は『基礎演習行政法』から出題されるため、繰り返し演習して解答を暗記できるようにするのが効果的です。後期の期末試験は、授業で扱った事例問題よりも難易度の低い基本的な問題が出題されます。したがって、授業で得た知識を活用しつつ、予備試験や司法試験の過去問を利用して試験対策を行うと良いでしょう。


・民法

授業の受け方について
前期・後期を通じて配布される設例集の解説・検討が双方向形式で行われます。設例集の難易度はさほど高くなく、授業内で解説がされるため、事前に予備知識なしで解いてみるのが有効です。したがって、民法については復習よりも予習の比重がやや高いといえます。

試験について
期末試験は前期・後期ともに授業で扱ったテーマからしか出題されません。そのため、配布される設例集を繰り返し演習し、期末試験の過去問と解説を確認して、2時間で出題される問題量や求められる解答のレベルを把握しておけば、確実に「A」以上の評価を得られるでしょう。


・刑法

授業の受け方について
講義形式で行われ、基本知識の確認が中心となるため、予習に力を入れる必要はありません。授業では、基本知識に加えて学説対立に関する教授の見解や判例の評価も紹介されます。司法試験や期末試験に向けては、学説対立に深入りするより、基本書等を用いて基礎知識を十分に固めることを重視するとよいでしょう。

試験について
期末試験の難易度は司法試験と同程度、あるいはそれ以上のこともあります。ただし、相対評価であるため、過度に不安を抱く必要はありません。重要なのは、論点を漏らさず、問題点を明確にし、基本知識と自分なりの考えを踏まえて結論を導くことです。特に「落とさず拾う」姿勢で、取れるところで確実に点を積み重ねることが大切です。


・会社法

授業の受け方について
授業は双方向形式で行われ、毎回の授業終わりに次回の予習範囲が指定されます。事前にそれをこなしておけば、授業に困ることはありません。授業中は15分ごとにクラスメイトと話し合う時間が設けられているため、分からない点はその場で共有・質問できますし、教授に直接質問することも可能です。

試験について
試験問題は司法試験に類似した形式で出題されます。そのため、司法試験過去問を利用することは効果的です。また、期末試験の過去問は解説・出題趣旨に採点表が掲載されており、非常に有用です。したがって、期末試験過去問と司法試験過去問を併用して対策を進めるのが望ましいでしょう。


・民事訴訟法

授業の受け方について
民事訴訟法は他科目に比べて予習時間が長く求められますが、予習課題の難易度が高すぎて、努力が必ずしも授業理解に直結しないことがあります。そのため、授業中に答えられなくても気にしない性格の人は、思い切って予習をしない、あるいは最小限にとどめるのも一つの方法です。ただし、多くの人は授業で答えられない状況を避けたいと考えるでしょう。その場合は、クラス内だけでなく他クラスや先輩と協力し、予習の負担を軽減するのが現実的です。

試験について
教授ごとに形式は異なりますが、共通するのは「易しい問題と難しい問題が混在する」という点です。重要なのは、易しい問題を落とさないことに加え、難しい問題については「問題の所在」に至るプロセスを丁寧に示すことです。複雑な事案では問題点が見えにくくなりがちですが、授業で学んだ基本知識を駆使すればそこまで到達できます。焦らず、基本知識を的確に披露する姿勢が肝要です。


・刑事訴訟法

授業の受け方について
授業では、配布された判例集とレジュメを用い、双方向形式でテーマごとの判例・知識を確認・検討します。授業は判例集を読んでいることを前提に進みますが、予習すべき判例が多く、また読まずとも答えられる場合もあるため、予習の必要性はそれほど高くありません。ただし、刑事訴訟法では規範と具体的事実のあてはめが重要なため、復習段階では必ず判例集に目を通すべきです。

試験について
試験は司法試験に近い形式で出題されます。そのため、期末試験の過去問と司法試験過去問の両方を活用すると良いでしょう。また、授業内で教授が示す特定の起案方法・表現方法があります。少なくとも期末試験では、予備校や基本書で学んだ方法ではなく、教授が授業で提示した方法に従って答案を書くことが求められます。


第3 まとめ

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。
法曹を目指す道は、決して平坦ではなく、ときに孤独で、不安に押しつぶされそうになることもあると思います。それでも、この文章を最後まで読んでくださったあなたは、すでに一歩を踏み出し、前に進もうとしているのだと思います。
自分を信じて、目の前の一日一日を大切に積み重ねていけば、必ず道は開けます。時には休んでもいいし、迷っても構いません。大切なのは「自分がどう生きたいのかを忘れないこと」です。
みなさんが自分らしく挑戦を続け、納得のいく未来を掴まれることを、心から願っています。どうか最後まで諦めず、頑張ってください。

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