
第1 設問1
1 Kが、施錠されていないチャックを開けた行為は、所持品検査として適法か。
2⑴ 前提として、Kが行った職務質問(警職法2条1項)は、適法か。
⑵ F市では、長身で痩せ型、一方は黒っぽいジャンバーに紺色のジーパン、もう一方はグレーのブルゾンにカーキ色のチノパンをそれぞれ着用している2人組の男が、銀行強盗を行うという事件が発生していた。また、長身の若二人組がF市G町付近を国道沿いに歩いていたという情報がF警察署にもたらされていた。さらに、事件発生の翌日に、E鉄道のG長駅付近で若い2人連れの男から乗車を求められなかったが、載せなかったこと、同人らが白いミニバンに乗ったという情報を受けていた。そのような中で、同日午前0時10分頃、G長駅の方向から白いミニバンが近づいており、XとYが乗っていた。XとYが事件現場から犯人が移動したであろうルートを辿って移動していたこと及び、容姿が犯人と類似していることからも、「すでに行われた犯罪について、…知っていると認められる者」と言える。
⑶ したがって、Kらの職務質問は適法である。
3⑴ それでは、Xらが行った、所持品検査は、適法と言えるか。所持品検査の可否及び認められる基準が問題となる。
⑵ア 所持品検査は、口頭で行われる職務質問に密接に関連する。また、所持品検査は、職務質問の効果を上げる上で、必要性と有効性が認められる。そのため、所持品検査は、職務質問に付随する行為として、認められる。
イ そして、所持品検査が、職務質問に付随する行為である以上、原則として、被処分者の承諾が必要である。もっとも、例外として、①捜索に至らない程度のものであり、強制にわたらない限り許容される。②もっとも、受ける者の権利侵害しうる者であるため、警察比例の原則(同法1条2項)が適用される。具体的には、必要性、緊急性を考慮して、具体的状況の下で相当と言える場合には、適法と言える。
⑶ア 本件では、Xは、Kからリュックサックの開封を求められたが、繰り返し明確に拒否している。そのため、Xは、所持品検査を承諾していたとは言えない。
イ 強制処分とは、被処分者の明示または黙示の意思に反し、重要な権利利益を実質的に侵害するような行為である場合をいう。
本件では、Xは、リュックを開けることを繰り返し明確に拒否している。そのため、リュックを開けることは、Xの明示的な意思に反する。また、確かにリュックサックを開封した際に、リュックサックは施錠されていなかった。しかし、リュックサック自体は、閉じられて外から中身が見える状態ではなかった。すなわち、中身が把握されることが想定されていたとはいえない。そのため、Xのみだりにリュックの中身を把握されない利益の要保護性は高かった。そして、外から触って内容物の形を確かめるにとどまらず、完全に中身の形状等を把握する当該行為は、Xの重要な利益である同利益を実質的に侵害するものであった。そのため、かかる行為は、強制処分と言える。
同行為は、銀行強盗の証拠品たるナイフ、拳銃、覆面等を発見するために行われており、探索行為である。そのため、かかるXの重要な利益たるみだりにリュックの中身を見られない自由を侵害するような探索行為である当該行為は、捜索といえる。
4 よって、本件行為は、捜索にあたり、違法と言える。
第2 設問2
1 現金、帯封の証拠能力は違法収集排除法則により否定されないか。
2 司法の廉潔性、適正手続、将来の違法捜査の抑止の観点から、①令状主義の精神を没却するほどの重大な違法があり、②当該証拠を採用することにより、将来の違法捜査排除の観点から相当でない場合には、証拠能力が否定される。
3⑴ア 本件では、アタッシュケースの解錠が所持品検査として行われているため、上記の基準で適法性を判断する。
イ 本件では、Xは、アタッシュケースの鍵の提出を拒否している。そのため、アタッシュケースの会場について、Xの承諾を得ていない。
ウ そして、アタッシュケースは、施錠されていた。そのため、中身を見られることが想定されていない。また、鍵によらずMがドライバーでこじ開けている。そのため、Mの同行為は、Xのみだいりにアタッシュケースの中身を見られない利益という重要な利益を侵害している、
したがって、同行為は、捜索にわたり、Mの行為は、違法である。
⑵ そして、Mは、令状なくアタッシュケースの捜索を行なっている。そのため、令状主義(憲法35条1項)に反している。また、Mは、令状に基づく必要な処分(222条1項、111条1項)としても、認められないような、アタッシュケースの破壊を伴う解錠をMが行なっている。そのため、違法の程度は、極めて高い。
⑶ ナイフ等が発見されていないことから、かかる現金と帯付がなければ、Xを逮捕することはできなかった。そのためかかる証拠は、重要な証拠であったと言える。また、ケースの破壊がなければ、現金、帯封は発見されなかった。そのため、かかる違法行為により、直接かかる証拠が取得されている。さらに、職務質問の際に荷物の開封等を拒否することは日常的であることからも、かかるアタッシュケースの破壊を伴う捜索を認めると、日常的にかかる行為が行われるようになる危険もある。加えて、重要な証拠であるため重大な違法行為を認めるとすると、将来の違法捜査を助長する。そのため、かかる証拠を採用する利益よりも、将来の違法捜査を助長する危険の方が高い。したがって、かかる証拠採用することは、将来の違法捜査の抑止の観点から相当ではない。
4 よって、違法収集証拠排除法則が適用され、かかる証拠の証拠能力は、否定されると判断するべきである。

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