
1 甲社は、Bに対して、任務懈怠責任に基づく損害賠償請求(会社法423条)を主張することが考えられる。かかる請求は、認められるか。
2⑴ 前提として、Bが、乙社の代表取締役として、 英語教室を開校し、営業した行為は、競業取引にあたり、競業取引規制の適用を受けるか(会社法365条、356条1項1号)。
⑵ 競業取引規制の趣旨は、取締役がノウハウ等を利用して会社の利益を犠牲にしてえ自己の利益を図るような取引を防止する点にある。そこで、競業取引とは、会社が実際行っている取引や将来行おうとしている取引において、市場及び商品において、競合する取引を意味する。
本件では、甲社は、関東地方において、高校生向け英語教室を営業している。他方で、乙社は、近畿地方で海外流が悪用の英語教室を開校している。そのため、市場において、競合しているといえないとも思える。しかし、甲社において、近畿地方で英会話教室を開校することが取締役会で決定されていた。そのため、乙社の英会話教室は、将来において、市場及び目的物において、競合することが予定されていた。そのため、乙社が近畿地方で英会話教室を開校し、営業下ことは、競業取引に当たる。
⑶ 上記競業取引規制の趣旨に加え、競業取引により、会社が受けた損害を算定することが困難であることから、取締役又は第三者が得た利益が損害と推定される(423条2項)。そこで、「ために」とは、計算において、すなわち、経済的利益の帰属主体を基準に判断する。
本件において、当該営業の利益は、乙社が受けている。そのため、利益の帰属主体は、乙社であり、「取締役が…第三者」の「ために」した取引と言える。
⑷ したがって、Bがした行為は、競業取引にあたり、競業取引規制の適用を受ける。
3⑴ それでは、甲社の上記主張は、認められるか。かかる主張の要件は、①「役員等」であること、②「その任務を怠った」こと、③「損害」が生じていること、④②によって、③が生じていること、すなわち、因果関係が認めらること、⑤帰責事由(428条参照)である。また、③は、取締役又は第三者が得た利益の額が、損害の額と推定される。
⑵ 本件では、Bは、甲社の取締役であり、「役員等」に当たる(①充足)。
⑶ 任務懈怠とは、法令、定款、株主総会決議の不遵守又は、善管注意義務(330条、民法643条)違反・忠実義務違反(355条)違反を言う。
Bが甲社を代表して行った、上記近畿地方での英会話教室の開校は、競業取引に当たる。そのため、Bは、競業取引につき、取締役会の承認を受ける必要がある(365条、356条1項本文)。しかし、Bは、甲社の承認を得ていない。そのため、競業取引規制に違反し、任務懈怠が認められる(②充足)。
⑷ そして、乙社は、3000万円の純利益を計上している。そのため、乙社は、3000万円の利益を得ており、甲社の損害額は、3000万円と推定される(③充足)。
⑸ 本件では、甲社が近畿地方で英語教室を開校していないことから、甲社に流れるはずであった顧客を乙社が獲得したと言える。そのため、乙社の利益と甲社が得るはずだった利益が得られなかったという損害は因果関係が認められる(④充足)。
⑹ Bは、甲社が、近畿地方にも進出することを知っていた。そのため、Bには、帰責自由が認められる。
4 よって、甲社の同請求が認められる。

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