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平成25年司法試験 行政法 参考答案

2026年8月30日

参考答案, 司法試験

第1 設問1

1 処分性の判断基準

本件認可(法39条1項)が取消訴訟の対象となる「処分」(行政事件訴訟法3条2項)に当たるか。

「処分」とは、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。その判断に当たっては①公権力性、②外部性、③法的効果性、④成熟性、から判断すべきである。

2 本件組合の法的性格

(1) 本件認可は、法39条2項、21条1項に基づいて公権力の主体たる知事が一方的に行うものであるため、公権力性は満たす(①)。

(2) 次に、外部性についてC県側は、本件組合が行政主体としての法的性格を有し、知事との関係では下級行政機関に当たるから、本件認可は行政組織内部における行為にすぎず、外部に法的効果を及ぼさないと主張することが考えられる。

確かに、本件組合は、施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有する者が当然に組合員となる強制加入制を採用している(25条1項)。また、組合は、事業経費に充てるため組合員から賦課金を徴収し(40条1項)、過怠金を課すことができるほか(同条4項)、賦課金等を滞納した組合員について市町村長に滞納処分を申請でき、一定の場合には知事の認可を受けて自ら地方税の滞納処分の例による滞納処分を行うこともできる(41条1項、3項、4項)。さらに、組合には換地処分を行う権限も認められている(103条3項)。これらは通常の私的団体には認められない公権力の行使に当たる権限であるから、本件組合には土地区画整理事業の施行者として行政主体としての法的性格が与えられていると解される。

さらに、知事は組合に対して報告・資料提出を求め、勧告、助言等をすることができ(123条1項)、その事業又は会計を検査する権限も有している(125条1項)。

 以上からすれば、C県側の、本件組合は知事の監督下にある下級行政機関に類する存在であり、本件認可は上級行政機関から下級行政機関に対する内部的行為にすぎないとの主張には合理性が認められるとも思える。

3 本件認可の私人に対する個別具体的な法的効果性

 C県側からは、本件認可の段階では個々の組合員に具体的な賦課金納付義務が発生しておらず、その後の賦課金の具体的な賦課徴収を待って初めて組合員の権利義務が具体的に変動するから、本件認可は紛争の成熟性を欠き、処分性がないとの主張が考えられる。 

 確かに、本件定款変更それ自体によって各組合員の具体的な賦課金額が確定するわけではない。賦課金の額及び徴収方法については総会の議決事項とされ(31条7号)、本件では具体的な賦課金額の算定方法は本件要綱によって定められている。

 しかし、本件定款変更は、従来存在しなかった賦課金制度を新設するものである。そして、本件組合は、法40条1項に基づき組合員から賦課金を徴収する権限を有し、その納付を怠った組合員については、督促を経て地方税の滞納処分の例による強制徴収に至り得る(41条1項、3項、4項)。しかも、その徴収金には国税及び地方税に次ぐ順位の先取特権が認められている(同条5項)。

 そうすると、本件認可によって本件定款変更の効力が生ずれば、組合員は、特段の事情がない限り、以後具体的に賦課金を徴収され、その不履行について強制徴収まで受け得る法的地位に立たされているといえる。

 したがって、本件認可は単なる行政組織内部の行為にとどまらず、組合員の個別具体的な法的効果を与えるといえる(②〜④)。

4 そうだとしても、C県側は、都道府県又は市町村が土地区画整理事業を施行する場合には、費用の分担に関する事項を含む施行規程を条例で定めることとされていること(52条1項、53条1項・2項5号)を指摘することが考えられる。組合施行の場合の定款は、市町村等が施行する場合の条例による施行規程に相当するところ、判例では一般的・抽象的な法規範を定立する条例制定行為は通常取消訴訟の対象となる処分ではないとされている。もっとも、処分性の有無は形式的に条例制定行為との類似性だけから判断すべきではなく、当該行為が関係法令の仕組みの下で国民の法的地位にいかなる効果を及ぼすかを具体的に検討して判断すべきである。

 本件定款変更は、単に不特定多数人に対して一般的・抽象的な規範を設定するものではない。施行地区内の宅地の所有者又は借地権者は当然に組合員となるため(25条1項)、その対象者は施行地区内の具体的な権利者に限定されている。したがって、本件認可は、一般的・抽象的な法規範を定立する条例制定行為の処分性を否定した判例の射程は及ばず、組合員の法的地位に直接変動を及ぼすものと評価すべきである。

5 よって、本件認可は処分にあたる。

第2 設問2

本件認可は、法39条1項に基づく定款変更の認可である。同条2項は21条1項を準用しているため、同項各号所定の事由が存在する場合には、知事は認可をすることができない。

そこで、以下、本件認可の適法性を検討する。

1 本件事業の実質的破綻について

(1) 違法とする法律論

法21条1項4号は、「土地区画整理事業を施行するために必要な経済的基礎及びこれを的確に施行するために必要なその他の能力が十分でないこと」を不認可事由としており、39条2項により定款変更の認可についても準用される。

21条1項4号は、事業を適切かつ継続的に遂行できるだけの経済的基礎等を施行者に要求する趣旨であると解される。かかる趣旨からすれば、地価の見通しを誤り、資金計画の変更を繰り返すなど実質的に資金不足が生じている場合には、事業を遂行するために必要な経済的基礎又は能力を欠いており同号に反すると解すべきである。

本件事業は、当初、国及びC県からの補助金と保留地の処分収入によって実施する予定であった。しかし、地価の下落により保留地の処分が進まず、本件組合は度々資金計画を変更し、補助金の増額や借入れによって対応してきたにもかかわらず、なお事業費が不足し、最終的には組合員から総額15億円もの賦課金を徴収しなければ事業を継続できない状況となっている。

したがって、本件組合は事業計画の変更を繰り返しており、実質的に資金不足があるため、本件認可には21条1項4号所定の不認可事由が存在し、違法である。

(2) 適法とする法律論

これに対して、21条1項4号が要求するのは、当初の資金計画を変更することなく事業を遂行できる能力ではなく、必要な資金を適切な方法によって確保し、事業を遂行できる能力であるとも考えられる。

法40条1項は、組合が事業経費に充てるため組合員に賦課金を課すことを明文で認めている。そのため、当初予定した保留地の処分収入が減少した場合に、法の予定する賦課金制度を利用して不足する事業費を調達すること自体は、直ちに経済的基礎・能力の欠如を意味しない。

むしろ、本件定款変更によって15億円の賦課金収入を確保できるのであれば、それによって事業遂行に必要な経済的基礎を回復できるとも評価できる。

したがって、資金計画を変更してきたことのみから直ちに21条1項4号には該当せず、適法である。

(3) 私見

確かに、本件組合は直ちに経済的基礎・能力が欠如しているとはいえない。

しかしながら、本件では資金計画の変更を度々繰り返した上、なお15億円もの巨額の不足が生じている。これは単なる一時的な資金不足ではなく、事業計画自体の経済的見通しに重大な問題があったことを示すものといえるから、本件組合は同号所定の経済的基礎・能力を欠いていると評価すべきである。

よって、本件認可は法39条1項、21条1項4号に反して違法である

2 白紙の書面議決書の取扱い

(1) 適法とする法律論

本件定款変更は総会の特別議決事項であり、組合員の3分の2以上が出席し、出席組合員の人数及び地積の双方について3分の2以上の賛成を要する。

法38条3項は組合員が書面によって議決権を行使することを認め、同条4項はその者を出席者とみなしている。そして、定款変更の「決定手続」が法令に違反する場合には、21条1項2号に該当し、39条2項により知事は定款変更を認可できない。

本件臨時総会には総組合員1161名中907名が出席したものとして扱われ、795名が本件定款変更に賛成している。

また、書面議決書500通には組合員本人の署名捺印がされている。そのため、組合員が白紙の書面議決書をDに交付した行為を、議案についての判断をDに委ねたもの、あるいはDの提案に従って賛成する趣旨であったと評価できるのであれば、Dが「賛成」と記載したことも組合員本人の意思に基づく議決権行使として有効であるとの主張が考えられる。

(2) 違法とする法律論

しかし、法38条3項が「書面」による議決権行使を認めた趣旨は、総会に現実に出席できない組合員についても、当該組合員自身の意思を総会の議決に反映させることにある。

そうすると、書面による議決権行使として有効であるためには、少なくとも当該書面から組合員本人の賛否の意思が明らかになっていることを要すると解すべきである。

本件では、500名の組合員は署名捺印したものの、賛否について何ら記載しない白紙の書面を提出したにすぎず、Dが後から自ら「賛成」と記載している。これでは、組合員自身が議案に賛成する意思を表示したとはいえず、法38条3項の予定する書面による議決権行使とは評価できない。

そこで500票を賛成票から除外すると、賛成者は、投票による225名と、書面による賛成570名から500名を控除した70名の合計295名にとどまり、必要な特別多数を満たさない。

(3) 私見

法38条3項の趣旨からすれば、書面議決は組合員本人の賛否の意思が明確に示されていることを要すると解すべきである。

本件では、500名の組合員は白紙の書面を提出したにすぎず、Dに賛否の決定まで委ねたことを示す事情もない。したがって、これら500票を賛成票として扱うことはできず、せいぜい棄権として扱うべきである。

よって、本件定款変更は必要な特別多数を欠き、その決定手続は法令に違反するから、21条1項2号所定の不認可事由が存在する。

したがって、この点から本件認可は違法である。

3 賦課金の算定方法

(1) 適法とする法律論

法40条2項は、単純に地積に比例して賦課金を課すことを要求しているわけではなく、「位置、地積等」を考慮した公平な負担を求めている。

そのため、宅地の規模によって組合員の負担能力や事業から受ける利益の程度等に差異があるのであれば、小規模宅地の所有者等に一定の政策的配慮を行うこと自体は許される。

したがって、300平方メートル以下の宅地について賦課金を免除することにも合理性があり、直ちに40条2項に反するとはいえないとの主張が考えられる。

(2) 違法とする法律論

本件では、総組合員の約80%に当たる930名が賦課金を全額免除される一方、残り約20%の組合員だけで15億円全額を負担することになる。

しかも、免除される者の宅地の地積は全体の4割近くを占めるのであり、本件事業から利益を受ける多数の組合員について負担を完全に免除し、残りの少数者に全負担を集中させることになる。

Dは「小規模宅地の所有者等に対する政策的配慮」と説明しているにすぎず、このような極端な負担の差異を合理化する具体的事情は示されていない。

したがって、300平方メートルを境として一方を完全に免除し、他方に15億円全額を負担させる算定方法は、宅地の位置・地積等を考慮したとしても合理的な範囲を超え、40条2項の要求する公平性に反すると解すべきである。

(3) 私見

法40条2項は、各組合員に完全に同一の負担を課すことまで求めるものではなく、宅地の位置、地積等に応じて合理的な差を設けることは許される。

しかし、本件では、総組合員の約80%を全額免除し、残る約20%の組合員だけに15億円全額を負担させているうえ、免除対象者の宅地も全体の約4割を占めている。このような著しい負担の偏りについて、単なる「政策的配慮」以上の合理的根拠は認め難い。

したがって、本件算定方法は合理的な負担調整の範囲を超え、法40条2項の要求する公平性に反すると解する。

よって、本件要綱に定められた賦課金の算定方法は法21条1項2号の定款の内容の法令違反があるとして、本件認可は違法である。

  

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