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平成25年司法試験 民事訴訟法 参考答案

2026年9月1日

参考答案, 司法試験

第1 設問1

1 昭和47年判決

 昭和47年判決は、三十筆余の土地及び数棟の建物を含む全財産を遺贈する内容の遺言の無効確認を求める訴えについて、(a)遺言から生ずる現在の特定の法律関係が存在しないことの確認を求める場合で、(b)原告にその確認を求めることにつき法律上の利益(確認の利益)が認められる場合に訴えを適法としている。

2 確認の利益

 確認の訴えにおいては、確認対象は無限定であり、また、確認判決 は執行力を有しないため紛争の抜本的な解決に結びつかない場合もある。そのため、無用な訴えを排除すべき必要性がある。確認の利益の有無は、当該事項を確認することによって当事者間の紛争の抜本的解決を図ることができるかで決せられ、具体的には、ⅰ対象選択の適否、ⅱ即時確定の利益、ⅲ方法選択の適否の3つの視点からその有無を判断する

3 本件事案

(1) 昭和47年判決の事案は、遺言によって三十筆余の土地と数個の建物という、多数の不動産の財産の帰属が問題となっていた。これを、当該財産の個々の所有権確認の訴えによって解決しようとすれば、訴状において全ての財産を漏らさず記載する必要がある。それでは、個々の財産を漏らしてしまう危険もあるし、むしろ、当該全財産の所有権移転原因である遺言の無効確認をした方が、抜本的な紛争解決につながる。

(2) 他方、本件事案においては、遺言①の遺贈によって所有権が移転したのは、土地甲1一筆だけであった。土地が一筆だけであれば、訴状において財産を漏らす危険はないし、むしろ、甲1の所有権確認訴訟の方が、現時点での甲土地の所有権の帰属が直接、判決によって確定することとなり、EとBとの間の土地甲1をめぐる紛争を抜本的に解決することができる。

(3) したがって、訴訟Ⅰは、遺言の無効よりも土地甲1所有権の確認を求める方が、より紛争解決に資するため、①確認対象の適切性が否定され、訴えの利益を欠き、不適法となる。

第2 設問2

1 当事者適格

 当事者適格とは当該訴訟物につき当事者として訴訟を追行し本案判決を求めることができる資格をいうところ、誰をしてその名において訴訟を追行させ、また、誰に対し本案判決をすることが必要かつ有意義であるかという観点から判断すべきである。そして、当該財産の管理処分権を有していることは、当事者適格の判断の重要な要素となる。

2 遺言執行者について

 遺言執行者(民法1006条)は、相続財産についての管理処分権を有している(民法1012条1項)から、相続財産である土地甲2の所有権移転登記手続を求める訴えの被告適格は、法定訴訟担当者としての遺言執行者Dにあるとも思える。

 しかしながら、本件ではすでに所有権移転登記が受遺者Cに経由されている。遺言執行者が相続財産の管理処分権を有するのは、遺言の執行に必要だからであり、遺言の執行が完了した後は、財産の管理処分権は受遺者に帰属すると考えるべきである。仮に、遺言の執行完了後も遺言執行者に管理処分権が帰属したままだとすると、遺言執行者は遺言執行から解放されなくなり、不合理である。そうすると、遺言の執行完了後は財産の管理処分権は遺言執行者ではなく相続人にあり、相続人をしてその名において訴訟を追行させ、また、誰に対し本案判決をすることが必要かつ有意義であるといえるから、被告適格は相続人に認められる。本件では、受遺者Cが土地甲2の所有権移転登記を経由しており、遺言②の執行は完了している。したがって、甲2の管理処分権は遺言執行者Dではなく、受遺者Cにあり、甲2の所有権移転登記の抹消を求める訴訟Ⅱの被告適格は、DにはなくCに認められる。

3 以上より、Dを被告とする訴訟Ⅱは被告適格を欠き不適法である。

第3 設問3

1 小問(1)

 相続による特定財産の取得を主張する者が主張すべき要件事実は①特定財産を相続人が所有していたこと(民法896条)②被相続人の死亡(同882条)③相続人と被相続人との関係(同887条等)である。本件の事実関係に即していえば、(あ)Fは平成15年4月1日に死亡したこと(②)(い)GはFの子であること(③)(う)Jの土地乙もと所有(え)JはFに乙土地を売ったこと(①)となり、これらが請求原因となる。

2 小問(2)

(1) 上記請求原因事実を判決の基礎とするためには、弁論主義の観点から当事者による主張が必要となる。弁論主義とは、弁論主義とは、判決の基礎となる事実と証拠の収集と提出を当事者の権能かつ責任とする建前をいい、弁論主義の下、裁判所は、当事者が主張していない事実を判決の基礎とすることができない(弁論主義の第1テーゼ)。

(2) 本件では、Gの主張の中で、「Gの父F」(い)「生前」(あ)「GがJから買い受けた」(う)との事実が主張されている。また、被告Hから、「Jから土地乙を買い受けたのはGではなく、Hの父F」(え)との事実が主張されている。弁論主義は当事者と裁判所の役割分担を定めるものであるから、当事者のどちらから主張された事実であっても、判決の基礎とすることができる(主張共通の原則)から、裁判所は、上記請求原因事実を判決の基礎としても、弁論主義違反はないことになる。

(3) もっとも、前訴で原告GはGJ間の乙土地売買を請求原因事実として所有権確認と登記移転を求めていたのであり、Fからの相続を原因として所有権(共有権)と登記移転を求めていたわけではない。また、被告Hも、Fからの相続ではなく、贈与を請求原因事実として乙土地の明渡しを求めていた。それにもかかわらず、前訴で上記請求原因事実を認定して判決をしてしまえば、当事者の予期しない判決が下されてしまうことになり、弁論主義の機能である不意打ち防止を果たすことができない。

(4) そこで、裁判所が適切に釈明権を行使して、当事者に当該事実を主要事実として判決がなされることを明らかにし、当事者への不意打ちを防ぐべきである。

(5) 以上より、裁判所が適切に釈明権を行使したならば、上記請求原因を判決の基礎とすることができる。

第4 設問4

1 平成10年判決について

(1) 平成10年判決は、明示の一部請求について、一部ないし全部棄却判決がなされた後の、原告による残部請求を信義則によって却下しており、信義則によって遮断効を拡張したものである。

(2) 平成10年判決は、その理由として①一部請求であっても審理は債権全体に及ぶこと②一部請求を一部ないし全部却下する判決は、残部が存在しないことを示すものに他ならないこと③その場合の原告による残部請求は、実質的に前訴で認められなかった主張の蒸し返しであり、被告の紛争解決に対する合理的期待に反し、被告に二重の応訴の負担を強いるものであること、を挙げている。

2 本件における遮断効の縮小

(1) 本件では、Gが前訴で乙土地所有権確認請求について全部棄却判決を受けたことにより、Gの乙土地(共有持分権を含む)所有権不存在に既判力(民訴114条1項、以下法名略)が生じている。Hは、この既判力によってGの共有持分取得の事実主張が排斥されると主張している。

(2) しかしながら、Hの主張は、所有権と共有持分権が包含関係にあり、所有権確認の全部棄却判決は共有持分権もないとの判断を示すものであるとの理解を前提とするものであるところ、前訴はこの包含関係を見落としていた。つまり、前訴は共有持分権については実質的に審理をせずに全部棄却判決をしていたのである(①の否定)。

(3) そうすると、前訴判決は所有権確認を全部棄却したといっても、それはGの共有持分権すらも存在しないとの判断を示しているとは言えないことになる(②の否定)。そして、前訴判決は釈明権を行使することなく全部棄却判決をしているのであるから、共有持分権すらも存在しないという点に既判力を生じさせることにつき、既判力の正当化根拠たる手続保障に基づく自己責任をGに問うことはできないはずである。

(4) そうだとすれば、Gの後訴での共有持分権の主張は、前訴で審理判断されなかった事項についての主張になるので、主張の蒸し返しになるとは言えない(③の否定)。

(5) さらに、Hは前訴で乙土地明渡しを求める反訴について全部棄却判決を受けており、乙土地の単独所有権が実質的に否定されたのにも関わらず、なお乙土地の単独所有権を主張している。乙のこのような態度は、一方で判決に反する態度をとりながら、他方で前訴判決の効力によってGの主張を排斥しようとするものであり、矛盾する態度であると評価できる。

(6) 加えて、実質的に共有持分権について審理判断されていない、不当な判決である前訴判決の既判力を持ち出して、Gの主張を排斥しようとするようなHの態度こそ、信義則(2条)に反する。

(7) 以上より、本件では信義則を根拠に、遮断効はGの共有持分権の主張を遮断しない範囲に縮小され、Gの当該主張は許されることになる。

  

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