平成23年予備試験 民法 参考答案
2026年6月14日
参考答案
1 Dは、Cに対し、甲土地の所有権に基づく返還請求として、甲土地明渡請求をすることが考えられる。この請求が認められるためには、①Dが甲土地の所有権を有していること及び②Cが甲土地を占有していることが必要である。
2 ①Dが甲土地の所有権を有すること
(1) Aは平成20年3月5日、Bとの間で甲土地の売買契約を締結した(以下「AB間売買」という。)。その後、Bは平成21年10月9日、Dに対し甲土地を1000万円で売却した(以下「BD間売買」という。)。
(2) もっとも、AB間売買は、A及びBが税金滞納による差押えを免れる目的で通謀して行った仮装売買である。このような通謀虚偽表示は無効である(民法94条1項)。したがって、Bは甲土地の所有権を取得しておらず、DもBからの承継取得によって当然に所有権を取得することはできない。
(3) そこで、Dが94条2項の「第三者」として保護されるか検討する。
ア 94条2項の「第三者」とは、虚偽表示の当事者及びその包括承継人以外の者であって、虚偽表示の目的物について法律上の利害関係を有する者をいう。また、自ら虚偽の外観を作出した本人の帰責性に鑑みれば、第三者に無過失まで要求することは利益衡量上妥当でなく、「善意」とは善意のみで足りる。さらに、本人と94条2項の第三者との関係は177条の対抗関係に立たないため、第三者は登記を備えることを要しない。
イ 本件において、DはAB間売買の当事者ではなく、AB間売買が有効であることを前提としてBから甲土地を取得した者であるから、「第三者」に当たる。また、DはAB間売買が仮装によるものであることを知らなかったため、善意である。
(4) したがって、AはDに対しAB間売買の無効を主張することができず、Dは甲土地の所有権を取得する。
3 ②Cによる甲土地の占有
Cは、甲土地上の乙建物に居住しているため、甲土地を占有している。
4 以上からすれば、DのCに対する上記請求が認められるのが原則である。
5 もっとも、CがDに対抗し得る占有権原を有するか検討する。
(1) Cは平成21年5月23日、Bとの間で甲土地について賃貸借契約を締結している。そこで、CがDに対抗し得る占有権原を有するか、他人物賃借権にも借地借家法10条が適用されるかが問題となる。
確かに、他人物賃借権は債権的には有効であるが、Bには甲土地について賃貸権限がないため、真の権利者Aとの関係では効力を主張できない。このような不完全な賃借権には、借地借家法10条による保護を与えるだけの要保護性がない。
したがって、原則として、Cは借地借家法10条による保護を受けることはできない。
(2) もっとも、他人物賃貸人であるBが真の所有者Aを相続したことにより、Bの無権限状態が治癒されないか。
ア この点、相続人は被相続人の地位を承継する一方、自己固有の地位も有すると解される(地位併存説)。もっとも、自ら他人物賃貸借を締結した者が、相続により取得した地位を利用して追認を拒絶することは、自らの先行行為と矛盾する態度であり、信義則(1条2項)に反するというべきである。
イ 本件では、B自身が無権限で甲土地を賃貸した当事者であり、Aを相続した者であるから、追認拒絶は許されない。したがって、BC間の賃貸借契約は有効なものとなり、Cは甲土地について借地権を取得すると思える。
(3) もっとも、DがBから甲土地を取得した平成21年10月9日当時においてはCは対抗力のない他人物賃借権しか有しておらず、Cを甲土地から追い出すことができると期待していたDの期待を害する。そこで、116条ただし書を類推適用して、追認の遡及効は制限されるべきである。
6 以上より、CはDに対抗できる賃借権を有さず、Dの請求が認められる。
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