平成23年予備試験 民事訴訟法 参考答案
2026年6月22日
参考答案
第1 本件では、訴状には被告としてYが表示されているものの、Yは訴状送達前に死亡しており、実際にはその相続人であるZが訴訟を追行している。
そこで、本件訴訟の被告がYとZのいずれであるか、また有効な訴訟係属が認められるかを前提として、控訴審がいかなる裁判をすべきかが問題となる。
1 当事者確定はいかなる基準で行うべきか。
(1) 当事者は人的裁判籍(4条)をはじめとする訴訟要件の判断基準となるため、訴訟提起当初から明確に確定される必要があるため、当事者は訴状の当事者欄の記載を中心としつつ、請求の趣旨及び請求原因を含めた訴状全体の記載を客観的・合理的に解釈して確定すべきである。
(2) 本件では、訴状には被告としてYの氏名及び住所が記載されている。また、Zは被告本人としてではなく、被告の法定代理人として表示されている。さらに、請求原因としてもXY間の売買契約に基づく請求が主張されている。
以上によれば、訴状の記載を客観的・合理的に解釈すると、本件訴訟の被告は「Y」である。
2 もっとも、Yは訴え提起の2日後に死亡しているため、訴訟係属していないのではないか。
(1) 訴訟係属は、訴状の送達によって被告が訴訟に組み込まれ、当事者対立構造が形成された時点で生じると解される(138条1項)。
(2) 本件では、被告とされたYは訴状送達時には既に死亡していた。死者は当事者能力を有しないから、Yに対する有効な訴状送達はあり得ない。したがって、本件では有効な訴訟係属は生じておらず、Zによる訴訟行為及びこれを前提とする第一審判決も無効となると思われる。
3 しかし、そのように解すると、実際に訴訟を追行したZの訴訟活動が全て無意味となり、訴訟経済を著しく害するのみならず、勝訴したXの手続的利益も不当に害され妥当ではない。。
(1) 確かに、訴訟承継(124条1項1号)は有効な訴訟係属の存在を前提とするため、本件に同号を直接適用することはできないが、被告が訴訟提起後、訴状送達前に死亡した場合には、既に訴訟成立に向けた手続は開始されており、訴訟係属後に死亡した場合と実質的差異は乏しい。また、相続人が自ら訴訟を追行しておきながら、後になってその無効を主張することは信義則(2条)にも反する。
そこで、被告が訴訟提起後、訴状送達前に死亡し、その相続人が訴訟を追行した場合には、124条1項1号を類推適用し、相続人への訴訟承継を認めるべきである。
(2) 本件では、Yは訴状提出後に死亡しており、潜在的な訴訟継続が認められる。また、相続人Zは第一審を通じて被告側として訴訟活動を行っており、十分な手続保証があったと認められる。
したがって、124条1項1号の類推適用により、Zへの訴訟承継を認めることができる。
第2 控訴審の処理
1 上記したとおり、本件訴訟においては、ZがYの地位を承継したものとして扱われる。したがって、控訴審はXとZを当事者として審理すべきである。
2 もっとも、第一審判決は実質的にはZを被告として審理していたにもかかわらず、判決上はYを被告としている点で不当であるため(305条)、控訴審は第一審判決を取り消すべきである。もっとも、Zは第一審において答弁、主張立証等の訴訟活動を十分に行っており、更に弁論をする必要はない(308条1項)。
したがって、控訴審は第一審へ差し戻すことなく、第一審判決を取り消した上、控訴審自ら本案判決をすべきである。
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