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令和4年予備試験民法 参考答案例

2026年2月1日

参考答案

第1 設問1

1 小問(1)

⑴ 本件請負契約(民法(以下略)632条)は「売買以外の有償契約」であるから、売買に関する契約不適合責任の規定が準用される(559条)。そこで、Bは、563条2項2号に基づいて本件請負契約に基づく報酬の減額請求をすると考えられる。かかる請求は認められるか。

⑵ 塗料αを使用することが本件請負「契約の内容」(562条1項本文)となっていたか。

ア この点について、契約の内容は当事者の意思の合致により決されるから(522条1項参照)、契約内容は当事者の合理的意思を解釈して実質的に判断すべきである。

イ 本件請負契約の締結にあたり、Bは、Aに対して、外壁の塗装にαを使用することを明示的に申し入れ、Aはこれを了承している。塗料αの使用は、同契約の内容となっていたといえる(522条1項)。

ウ したがって、AがBに無断で塗料αでなく塗料βを使用して甲建物を建築したことは、本件請負の「品質」に関して「契約の内容」に適合しないといえそうである。

⑶ もっとも、塗料βの方が塗料αよりも防汚防水性能に優れており高価であり、塗料βを用いた方が甲建物の客観的価値は高いことから、例外的に「契約の内容」に「適合しない」とはいえないのではないか。

ア この点、旧法下における瑕疵担保責任では、瑕疵は客観的事情から通常有すべき品質を欠いていることをいうとされていた。もっとも、債権法改正により旧法下とは異なり、契約の内容は当事者の意思を解釈して判断すべきこととされている。したがって、客観的な価値よりも当事者の意思の合致から契約内容を判断すべきである。

イ 前記の通り、Bが甲建物の外装塗装には塗料αを使用して欲しいとの申し入れに対して、Aはこれを了承しているから、本件請負契約における甲建物の外装塗装には、塗料αを使用することが「契約の内容」になっていた。そして、Aは周囲からの反発を受けたため、塗料αではなく、塗料βを使用して外装塗装を行っているところ、このことについてAになんら伝えていない。また、Bは塗料αが極めて鮮やかなピンクである点に着目してAに対して同塗料を使用することを求めていると考えられ、Bにとって耐久性の高さや防汚防水機能に優れているという点は重要ではない。これらの事情からすれば、Aは甲建物の外装塗装に塗料βを使用することについて知らず、黙示的な承諾もあったとは言い難いから、塗料βを用いたことによって甲建物の客観的価値が塗料αを用いた場合のそれより高いとしても、「契約の内容」に「適合しない」といえる。

⑷ 請負人Aは、Bのαによる再塗装の求めに対し、これを拒絶しているから、「履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき」に当たる。

⑸ また、塗料βで外壁を塗装したことに関してBが関与したわけではないため、Bの「責めに帰すべき事由によるものである」(563条3項)とはいえない。

⑸ よって、Bの上記請求は認められる。

2 小問⑵

⑴ Aがαによる再塗装を無償で行う旨の申し入れであれば、これは請負人による追完(559条、562条1項本文)の申し入れといえる。これに対して、注文者Bが求めている損害賠償請求は、再塗装に要する費用に関する損害の賠償を求めるものであるから、追完に代わる損害賠償請求権であると考えられる。

⑵ では、請負人が任意に追完の申し入れをしているにもかかわらず、注文者がこれを拒絶し、追完に代わる損害賠償請求をすることは可能か。

ア この点について、代金減額請求権は原則として追完の催告を要求していることから(563条1項、542条1項参照)、追完に代わる損害賠償請求権においては、請負人に対してまずは追完の請求をし、請負人に対して追完の機会を与えなければならず請負人が追完しなかった場合にはじめて、追完に代わる損害賠償をすることができると解する(追完請求権の優位性)。

イ 本件では、請負人Aが追完の申し入れを行なっており、請負人Aに追完の機会を保証すべきであるから、注文者Bはこれを拒絶できないというべきである。したがって、BはAに追完の機会を与えていないから追完に代わる損害賠償を求めることはできない。

⑶ よって、Bの上記請求は認められない。

第2 設問2

1 Fは令和2年1月10日を起算点として乙不動産の取得時効を主張することができるか。

⑴ 所有の意思は186条1項の暫定真実によりその存在が推定されることになるが、Eは令和2年1月20日では亡Dに「所有の意思」がない旨の主張をすると考えられる。

ア「所有の意思」は、占有権原の性質を踏まえ、外形的・客観的に判断されるべきである。

イ 乙の取得時効(162条1項項)の起算点として、Dが乙の占有を開始した令和2年1月10日を選択すると考えられるが、Dの乙に対する占有は、CD間の使用貸借契約に基づくものであって、外形的にみて他主占有である。また、固定資産税をDが負担していたという事情があるが、そのような特約が結ばれることは通常想定されているから、そのことのみで使用貸借契約としての性質が失われるわけではない。

ウ よって、令和2年1月10日時点では、Dに「所有の意思」がないので、Eは同日を起算点として取得時効を援用することはできない。

2 次に、Fは、自身が、親Dの乙に対する占有を相続により承継取得(896条)した令和9年3月1日(882条)を起算点として取得時効の主張をすることができるか。

⑴ まず、占有が承継されるか問題となるところ、無占有状態が生じることによる不都合をさけるべく、相続によって当然に占有は相続人に移転するので、FはDの占有を相続により取得する。

ここで、所有の意思は、占有取得原因の客観的性質に基づいて決定されるところ、FはDから使用貸借契約に基づく乙不動産の占有を取得しているから、他主占有であることは明らかであり所有の意思は認められない。そのため、Fは自己の占有のみを主張する必要がある(187条1項項)。しかし、Fは相続によって占有を取得しているところ、F固有の占有も原則としては他主占有に他ならない。そこで、Eとしては、相続が185条の「新たな権原」にあたり、他主占有が自主占有に転換されたと主張することになるが、かかる主張が認められるか。

⑵ この点につき、相続が新権原にあたらないと解すると、相続人が自己所有と信じて長年占有を継続しても時効取得をなしえないとすることは永続した事実状態を尊重するという時効制度の趣旨からして妥当ではない。したがって、相続人による事実的支配が外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものである場合には、相続は「新たな権原」にあたると解すべきである。

⑶ Dを単独相続したFは、乙不動産について、DがCから贈与を受けたと理解していた。そして、Fが、Cを単独相続したEに対し、乙の登記名義を自己に移すよう依頼し、真相を知らないEもこれを了承し、登記を移転した。その後、Fは、Dが乙で営んでいた本件ラーメン店の営業を引き継ぎ、同年5月1日、従業員から乙の管理を引継ぎ、まもなく営業を開始し、令和29年に至るまで、乙で同店の営業を続けている。さらに、FはDが負担していたのと同様に、乙不動産について固定資産税を負担しているのであって、固定資産税を負担するのは通常当該不動産の所有者であることからすれば、当該事情も所有の意思を基礎付ける客観的事情となると考える。

 以上より、Fの乙不動産に対する事実的支配が外形的・客観的にみて独自の所有の意思に基づくものに至っているといえるから、Fに「所有の意思」が認められる。

3 Fは、令和9年5月1日、本件ラーメン店従業員から管理を引き継いで新たに乙を事実上支配することによって占有を開始しているところ、仮に同日に新権原に基づく自主占有を取得したとしても、同29年4月15日現在において20年経過していない。したがって、同月1日のEの提訴による完成猶予・更新(147条1項1号、2項)を考慮するまでもなく、時効は完成しない。

4 よって、Fの主張は認められない。

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